春によるさざ波
京都の高校に進学が決まり、自動的に一人暮らしをするということも決まった。
持っていく物を纏めるついでに、気持ちの切り替えがてら部屋の整理もしてしまおうと思ったのだが、改めてこう見てみるとどうも僕の部屋は物が多い。色々な物で溢れている。日頃からなるべく綺麗に使うようにしているけれど、物が多いせいかあまり整った印象は受けない。単純に僕の片付けが下手だというだけかも知れないが。
放り投げられていた文庫本を机の上に置きながら、この機会に物を少なくしようと決めた。
そうして僕は少しずつ片付けを始める。要るもの、要らないもの、持っていくもの、置いていくもの。
いくつかの段ボールに分けて詰め込んでいく。なんとなくパズルでもやっている気分になった。段ボールの隙間を埋めていくのが似ているからかも知れない。
少しずつ部屋の物が無くなっていくのは寂しいような、スッキリしたような、不思議な感覚があった。
「やあ、遅かったね」
ノックの音にドアを開ければ微かに外気の冷たさを纏った大和が立っていた。部屋の掃除をしている、と言ったところ手伝うと言ってくれたのだ。
昔から、いつも彼は部屋の掃除を手伝ってくれる。それを知っていて言ったのだけれど、思った通りに変わらずこうして手伝ってくれるのが少し嬉しかった。
「意外だな」
半分以上終わっている室内に大和が目を丸めた。そうか、と首を傾げると、
「お前、昔から片付け下手だったじゃん。物捨てるのも苦手だったし」
と僅かな懐かしさを滲ませる。
ああ、確かに言われてみればそうかもしれない。物を捨てるのはどうも苦手だった。物を捨てるということが、思い出も何もかも捨ててしまうことのように思えたからだ。忘れてしまうような気がして出来なかった。
けれど今、僕は物を捨てることが出来ている。切り捨てている。
「こっちのは全部捨てるやつか?」
段ボールの横の文字を見てから中を覗く。
「そうだよ」
一瞬、横顔が寂しげに揺れて見えた気がした。
rewrite:2021.11.14