見ず知らずのひかり


※社会人(?????????)パロ

“つまんない”。
それを見たとき、至極退屈そうに言ったいつかのの姿を思い出した。過剰な装飾の施されたステージ上でライトに照らされ踊り舞う彼は普段の姿とはあまりにもかけ離れていて、本物なのか疑いたくなる。
けれどあれは間違いなくだ。化粧を施し動くたびにふわりと広がる衣装を纏った彼はここに君臨する女王のように見えた。

「あいつ、東雲だろ」

彼を見かけたと言い僕をここへと連れてきた大輝が、ぽつりと呟く。
あいつ、この辺りじゃすげえ有名らしいぜ。

「……有名?」

大輝が言うには彼はこの界隈では人気のダンサーなのだそうだ。艶やかな化粧を施し、美しい衣装を纏い、惑わせ煽るように踊る彼を男と知らずにモノにしたいと言い寄る人間は後を絶たないという。
高い金を払い彼の踊りを見て、また高い金を払い彼を口説くことが出来たとしても彼は決して誰のものにもならない。そうしてもう二度と、どれだけ金を積もうがその相手と話をすることは無い、と。

「この前そこのビルで飛び降りがあったんだよ。それ、あいつのせいだって」
「え?」
「あいつが言い寄ってきた野郎に『じゃあ愛の証明に飛び降りて見せて』とか言ったらしくてよ、そしたらそいつ、そのまま飛んだんだ」
「……誰が」
「黄瀬。知り合いがここの常連らしいぞ。あいつ、すっげえつまんなさそうな顔してそれ見てたって」

その現場を偶然見てしまった男はそれが忘れられなくて時折その事を夢に見るという。
そんなことがあっただなんて知らなかった。
そもそも、彼がこんなところに出入りしていているということ自体、僕は知らなかったのだ。何にも知らないような顔で笑って甘えてくる姿しか僕は知らない。

「ホントかよって思ったけど、こうして見てるとなんか納得しちまいそうだな」

高いヒールの踵を鳴らし、くるりと彼が回る。そうして食い入るように自分を見つめる観客に冷ややかな笑みを浴びせ、するりと彼は舞台袖へと消えていった。
きっとこれからは化粧と共に何もかもを落として、衣装と共にこの場のことを全てここに置いて帰るのだ。
ああ、いつも通りにおかえりと言えるだろうか。

rewrite:2021.11.11