Cemetery

※主人公:チャーミングな何様俺様天才(自称)様な人外説のある男(諸説あり)

波うつサテンの鰭々

▼ フロイド・リーチ / twst
※not監督生、英名推奨、設定が死んでいるけどサバナクロー寮のワニ先輩


教室から外廊下へと出た途端、何やら賑やかな歌声が聞こえ監督生たちは足を止めた。甘やかで美しい歌声に、低く響く伸びやかな歌声が重なり聞き惚れてしまうようなハーモニーが奏でられていく。弾む歌声は、聞いている側の体まで動いて踊りだしてしまいそうな程心底楽し気だ。どこから聞こえるのかと辿って行けば、三人と一匹は中庭に行きついた。「あ、やっぱフロイド先輩とエドワード先輩じゃん」光に透けると緑に煌くオリーブグリーンの髪と光を浴びて一層鮮やかなターコイズブルーの髪。この学園内でも高身長の部類に属する二人が手を取り合ってその場でくるくる回ったり、ステップを踏んで踊っている。「何してるんだあれ……」「踊りたい気分だったんじゃねーの?あの二人だし」エースの言葉にデュースはああ確かに、と頷いた。「え、なに?何で今納得したの?」「あの二人、その辺でよく踊ってるぞ。見たことないか?」「ないです……」監督生はまた歌い踊る二人を見る。同じく二人を見ていたグリムも、楽しそうなんだゾとなんだか踊りたそうにうずうずしていた。「……ああいうのRSAだけかと思ってた」仲良く手を繋いでくるくるくるくる回る様は、故郷で観たアニメ映画のプリンセスとプリンス達に似ている。「フロイド先輩ってあんな顔で笑うんだね」心底楽しそうで幸せそうな、NRC生とは思えないような邪気の全くない笑みに監督生はしみじみと呟いた。「そりゃあ恋人と一緒にいればあのフロイド先輩だってあんなんなるだろ」「え、恋人同士なの!?」「俺の番ちゃん~てフロイド先輩が部活で言ってたし、見てればわかんじゃん」「まあ態度がまず全然違うしな」「そうだっけ……」興味無さすぎだろ、と突っ込むエースに曖昧に笑ってから再度二人をちらりと見て監督生はぎょっと目を剥いた。満足するまで歌い踊った二人が熱烈なキスをしている。「お、おお……!?」口笛を吹いて冷やかしたり、野次めいた言葉が飛ぶ中で二人っきりの世界に浸る二人に、監督生はやっぱりここはD世界なのだなとしみじみ実感した。
2022.07.29 | 連載にするつもりだったけど断念したものの一遍

身代わり角砂糖

▼ フロイド・リーチ / twst
※not監督生、英名推奨、オクタ寮生


人の気配を感じて目を開け、それを少しだけ後悔した。睫毛が触れてしまいそうな距離でじっとりとこちらを覗き込むオリーブとゴールド。そこから放たれる重たく纏わりつくものが、じわじわと首を絞めるようだった。「……フロイド?」掠れた小さな声でも、目と鼻の先のこの距離ならば届く。フロイドは一度だけ瞬きして、ゆっくりとその瞳を弓なりにした。「おはよぉ、テディ」おはよう、なんていう時間ではない。少々日差しのわかりにくい水中の寮内だとて、明暗の差は多少なりともある。フロイド越しに見える窓の向こうも今は深海を思わせる暗さがあるから時計なんざ見なくてもド深夜だろうことは窺える。いつものフロイドならば夢の中で目一杯暴れているであろう時間だ。どうしたのかと声に出さずとも伝わったのだろう、あんねぇ、と瞳と同じ蜂蜜色の甘く蕩けた声が降り注いでくる。「さっき変な夢見てさあ」とろんと垂れた目尻を一層下げて「なんか心配になっちゃったから一緒に寝よ?」と俺から少し身を離しながら言う。夢ん中で、と今しがた見たのだろう夢の話をぽつぽつとこぼしながらフロイドは俺の返事なんざ聞かずに勝手にベットへ乗り上げ、タオルケットを捲り、隣へ潜り込んでぎゅぎゅっと抱き付いてきた。俺がよく分からん魔法薬を浴びて、指の先から少しずつ甘いシロップになっていって勿体無いから舐めとっていたら、すっかり俺はシロップとなりフロイドに舐め尽くされて飲み込まれてしまった。要約するとそんなような夢を見たフロイドは、夢現のまま本当に俺を飲み込んじゃったかもしれないと思い部屋まで来たらしい。寝てる俺を見てやっぱり夢だったと分かったけれど、目を閉じてるからもしかしたら人形かも、とじっと観察していたらしい。「美味しかった?」「めちゃめちゃ甘かった」「何の味?」「ん~……幸せになりそうな味」「ふぅん、俺も舐めてみたい」「ダメ。テディは全部俺のだから」蜂蜜舐めて我慢して、と言うフロイドはもうすっかりいつものフロイドに戻ったようだった。
2023.02.18