Cemetery

※主人公:チャーミングな何様俺様天才(自称)様な人外説のある男(諸説あり)

止まらない

▼ 一ノ瀬トキヤ / utpr

何事にも終わりはある。永遠なんてものが存在しないものなんて誰だって知っていることだ。私だってそんなこと解っている。解り過ぎるほどに。でも、だからこそ永遠を信じ、求め、追い縋るのだ。偶然に偶然が重なり奇跡が起こって、私は大和の隣を手に入れた。運命と呼ぶにはあまりにも頼りなく、あまりにも細すぎる糸が私と大和を繋ぎ、結んでくれた。今にも切れてしまいそうなそれを必死に守り続けてここまできたけれど、きっともう、終わりは近い。柔らかい朝日に照らされ淡く輝く大和にそっと息を吐いた。白くすべらかなその頬に触れ輪郭を辿るように撫で下ろす。辿りついた柔い唇を指先でなぞり、また息を吐いた。この唇はいままで一体どんなの人間に愛を囁いてきたのだろうか。そしてこれから、誰に愛を囁くのだろう。「ん、?」ふるりと長い睫毛が震え、ほどける。現れた海色の瞳が私を捉え、優しく細められた。溜め息が出るほど美しい笑みに胸を撃ち抜かれ息すらままならない。彼の全てが私を狂わせる。その蠱惑的な瞳に見つめられただけで愛を叫び、どうか愛してくれと縋り付きたくなる。「おはよ」甘く掠れた声にも、眠たげな瞬きにも欠伸を噛み締めるその姿にさえも、胸が締め付けられ眩暈がしそうだった。ああ一体、どうすればこのまま彼の隣に居続けられるのだろう。無防備なその姿をもう誰にも晒してほしくない、私にだけずっと見せていてほしい。けれどそれが無理な願いだとは解り切っていた。解り過ぎる、ほどに。だってもう、終わりは近いのだ。彼は私に対する興味を失くし始めている。彼と繋がってしまった時点でもう終わりは見えていたのだ。永遠なんてものは存在しない。大和の場合は尚更だ。彼の中には“一瞬”しか存在しない。「大和」でも私は永遠を信じ、求め、追い縋る。「なあに?」私は彼の隣に居続けたい。ずっとずっと、私が、もしくは大和が死ぬそのときまで。「あいしてます」だから、離れてしまうなら、“一瞬”で終わってしまうくらいなら、いっそ、
rewrite:2022.02.14

見つからない秘密をあげる

▼ イデア・シュラウド / twst

鮮やかなマリンブルーの瞳がふと暗く翳り色を失くす瞬間を目にしてから、ずっとその時のことが頭から離れない。どこか遠くを見つめる焦点のずれた虚ろな目と血の気の失せた頬が、延々と脳裏に映されて、目を閉じればすぐに浮かんできてしまう。どうして気になるのかが気になって姿を見かける度に目で追っていれば、そこからはもうずぶずぶと落ちていった。どう見たって自分とは真逆の場所に立つ圧倒的陽キャで、マジカメ狂いのケイト・ダイヤモンドや光属性代表のカリム・アルアジームなんかとも仲が良くて、絶対に接点も無ければ関わりたくも無いような人種なのに、気になって気になって仕方がない。今どうしてるかななんて気持ちの悪いことを考えてしまったり、タブレットのカメラ越しにその姿を捉えれば録画を開始してしまったり。どうしても出席しなければならない授業で目が合えばもうそれだけで苦しくて、少し笑んでくれただけでもう意味が分からないほど胸が痛くて泣きそうになって。なんだってこんなに乱されてしまうんだ、なんて思って、そうして出てしまった答えに絶望した。ああ、これはきっと叶わない。あまりに絶望的で死にたくなっても残酷にも時は過ぎるし朝は来る。そうしてまた出たくもない授業に出席した帰り、人気のない廊下を視線を床へ這わせて歩いていたとき、小さく洟を啜る音が聞こえた。ほぼ悪童しかいないような無法地帯において誰が来るかもわからない場所で泣くのは命取りだ。一体何処の馬鹿だ、なんて野次馬感覚で音の元へと近寄ってみれば、「アェッ」翳るマリンブルーに喉が詰まって奇妙な音が漏れた。ずっと目で追ってきた彼が、柱の陰に隠れるように凭れ座り込み虚ろな瞳から涙を落としている。焦点のずれた瞳からはらはら散っていく煌きの残滓が眩くて、目が離せなくて、引き寄せられるようにふらふらと近寄ってしまう。平時ならば絶対に近寄らなかっただろうが、今この瞬間を逃してはいけない気がしたのだ。チャンスだと思った。この、美しくも伽藍洞なマリンブルーに触れるたった一度の。
rewrite:2022.02.16

神様になるなら君しかいない

▼ レオーネ・警官ッキオ / jojo
※マフィアにならないッキオ


まるで神に懺悔するように頭を垂れてはらはら涙を落とし、自らの異常性を語った彼は、俺に目にはあまりにも美しく貴い生き物に見えてしまった。呆けた顔で彼を見つめる俺はさぞかし滑稽であっただろう。俺はたったの数分の、事情聴取のその一瞬で、悪魔に惑わされるが如く彼に魅せられてしまったのだ。今日会ったばかりの彼に傅きその身を満たすことだけに己の全てを捧げんと決めてしまうほどに、何もかも奪われてしまった。「大和、遅くなって悪かったな」もともと腐敗していた組織だ。多少“臭い”がきつくなろうとそうバレることはない。俺は己の持つもの全てでもって、彼を攫い、匿い、その花びらの唇が色を失わぬよう日々誰かを殺めた。「おかえりなさい、レオーネ……」「寝てたのか?髪がくしゃくしゃだぜ」「うん……」「ほら、起きろ大和。まだメシ、食べてないだろ?一緒に食おう」寝起きでぽやんとした顔をしている彼の背を押し、椅子へ座らせる。昨夜バラしたばかりの肉を彼の食べやすいように切り、皿へと盛り付けて持っていけば、途端、その瞳が憂いに満ちた。血に濡れた、どこの誰とも知れない人間の肉。彼の微かに震えた手がそっとフォークを握り一欠けら口へと運んだ。滴った血が彼の柔い唇を穢し、染める。この瞬間の陶酔とも恍惚ともつかない、夢に浮かされたような心地に背筋がぞくぞくと痺れて熱い息が零れた。「……ごめん、レオーネ、いつも、ごめんなさい」ぽろ、と瞳から落ちた涙がきらきらと輝く。己の嗜好を嫌悪し、それでも生きるために肉に歯を立てる彼の苦悩に満ちた顔と、喜びに蕩ける瞳のアンバランスさが毒々しいほど官能的で。砂糖菓子に群がる蟻のようにふらふらと、泣きながらも肉を食む彼の元へと跪く。「大和、俺は、お前の役に立てていることがとても嬉しいんだ。だから謝らなくていい。それに、俺は謝罪よりも礼の方がほしい、な、大和」「……うん、ありがとう、レオーネ」またひとつ涙がまろい頬を伝って落ちる。薄く弧を描いた唇の端からとろりと血が滴った。
rewrite:2022.02.16 | 映画『RAW』視聴記念のアバッキオくんです。

残された泥でつくるタイトル

▼ 寿嶺二 / utpr

燃えるような恋でした。どうしようもなく恋焦がれ、狂おしいほどに追い求めていました。彼はボクの世界の全てだったのです。彼がいればそれ以外は何もいらなかった。彼がいて、その隣にボクがいて、愛してると囁いて、笑って、手を繋いで、抱き合って、キスをして。他人にどう思われようが構わなかった。だってボクは、彼がいればそれだけでよかったから。幸せでした。そう、本当に、このまま死んでしまっても良いと思えるくらいに幸せでした。それは彼も同じです。このまま二人っきりになってしまえたらいいな、なんてとっても可愛いことを言ってすごく幸せそうに笑っていました。自分たち以外の人類が皆滅んでしまって、地上に二人っきりで取り残される……そんな話をよくしていました。狭いベッドにくっついて寝転んで、一枚の毛布に二人で包まって朝までずうっと。些細なことでも二人で共有すれば、途端に素晴らしいものに変わる。二人だけの秘密もたくさん作ってボクは彼との世界を構築していったんだ、誰も入れない、ボクと彼だけの……。まるで箱庭のようでした。素敵で幸せなものだけを詰め込んで、醜く汚いものは何一つない。彼は言いました。幸せ過ぎて死んでしまいそうだ、嶺二、て。甘くとけるような声で、これ以上ないくらい最高に綺麗な、ボクの大好きな笑顔で。もうボクは彼がいなければ呼吸すら間々ならなくなっていました。彼のことを想うあまり、息の仕方も忘れてしまう。彼もまた、ボクがいなければ何も出来なかった。お互い、相手がいないと何も出来ないんだ。それぐらい、ボクと彼は繋がっていた。「ボクは彼を愛していました。愛していたなんて言葉じゃとても言い表せないくらいに」彼を愛おしく想う気持ちは衰えることはなく、日に日に成長するばかりで、だから決めたんです。ボクは彼とのこの、完結した素晴らしい世界を完璧なものにするんだって。朽ちることのない、永遠のものにしようって。「だからボクは彼を殺しました。ボクと彼の、幸せのために」地獄が待っているなんて知らずに。
rewrite:2022.02.16

まともな思考にさよならしよう

▼ 空条承太郎(三部のすがた) / jojo

大和はよく俺の目をじっと見つめてはうっとりと微笑み、綺麗だと溜息を吐く。甘いを持ったピーコックブルーをとろりと細め俺の目元をそっとなぞるのだ。そうされる度にいつもこいつの方がよっぽど綺麗な目をしていると思う。「綺麗」微睡んでいるような声で言う大和に、ベッド脇の仄暗いランプの明かりで海のように揺れ煌めくこの目の方がずっと綺麗だ、とやはり思う。光の加減で深い青にも、眩いほど鮮やかな青緑にも変貌するそれは宝石なんぞとは比べ物にならない程美しい。だから俺はいつも意味もなく大和の目を見つめてしまうのだ。今の大和のように。ゆるゆると目尻を撫でていた指先を掴まえ、唇を寄せると剥き出しの肩がぴくりと跳ねた。指先を柔らかく食みながら首筋や鎖骨のあちこちに散らした鬱血を大和がしたようにゆるゆると撫でて辿れば、掠れた小さな声が零れ落ちてくる。堪らないとばかりに瞳を薄く滲ませ、散々キスしたせいで少し腫れぼったくなってしまった熟れた唇を開いて、溜め息のような声で俺の名を呼び言うのだ。「好き」堪ったもんじゃない。たった二文字にこいつはどれだけの感情を詰めれば気が済むのだ。甘く掠れたその言葉の持つ威力を、こいつはきっと知らないのだろう。その狂おしい程の愛で一杯になった目と声に、俺がいつだって殺されているなんてこと知らないのだ。何もかもを滅茶苦茶に壊され引っ掻き回され、息の根を止められてしまう。たったの二文字だけで。「……やれやれだぜ」まだ少し汗ばんでいるくったりとした体を抱き寄せ隙間なくぴったりと肌を合わせれば、ひどく幸せそうな溜め息が聞こえた。回された腕が愛おしげに俺の背を撫でていく。全く、この男はどれだけ俺を狂わせる気なのだろうか。抱き締める腕に力を込めながら、どんどんつくり変えられてしまっている自分を笑った。きっと俺は、まるで底の見えない沼のような大和の愛に、ただ為す術もなく飲み込まれ死んでいく運命なのだろう。
rewrite:2022.02.16 | 文字書きの為の言葉パレット(@x_ioroi)「首筋・指先・熱」

ぬるい木漏れ日

▼ レオーネ・アバッキオ / jojo

「お前、アバッキオを年端もいかない子供か何かだと思っていないか」アバッキオにせっせと料理をとりわけ、時折美味しい?と尋ねては返される答えに嬉しそうに目元を緩め、時折零れ落ちてくる長い髪を耳にかけてやり、飲み物が無くなれば注いでやり……と忙しなくアバッキオの世話を焼く目の前の男、大和に、ブチャラティは耐えきれずにフォークを置いた。「えっ」大和はブチャラティの言葉に目を丸くしきょとんとした顔をしているし、アバッキオも何故か不思議そうな目をしている。二人は目を合わせ、少しだけ首を傾け、それから揃ってブチャラティを見た。なんなんだ、こいつら、これが普通なのか?とブチャラティはそこはかとない不安感を抱いてしまう。「レオーネはもう子供じゃないけど」「そうだな、見ればわかる」眉を下げ何が言いたいのだ、といわんばかりの顔に、ブチャラティは少しだけ頭が痛くなる思いだった。ブチャラティの知る大和は自分とは四つしか年は違わないのに何でも知っていて自分に色々と教えてくれる、仕事も出来る頼れる男だ。彼にとっての大和は兄がいればこんなものだったろうか、と時々考えてしまうような存在だった。そんな密かに尊敬していた人物が、過保護なママみたいなことをしている。それも、自分より年上の同僚に。それはなかなかにショッキングな光景だった。「そこまで世話を焼かなくてもいいんじゃあないのか?まるで母親みたいだ」肩を竦め、そう言ったブチャラティにアバッキオは我関せずといった風にパッパ・ポモドーロを食べている。おい、今お前の話をしてるんだぞ、とブチャラティは目を細めた。「そりゃあ俺も時々、ママかよって思うけど」「けど?」「レオーネってなんか世話焼きたくなるような空気発してない?なんか、なんかさあ……」もごもごといつもは言わなくていいことまではきはきと元気よく話す彼にしては珍しく、歯切れが悪い。「俺の無いはずの母性が刺激される……」また垂れてきた髪を耳にかけてやるついでにするりとアバッキオの頭を撫でた大和に、ブチャラティはそうか、と力なく返事をして深い溜息を吐いた。
rewrite:2022.02.16 | アバッキオくんかわいいねっていう話です

もっと丁寧に息をして

▼ レオーネ・アバッキオ / jojo

「レオ、レオーネ」ふふ、と笑み交じりに何度も名前を呼ばれ、頭や頬を撫でられる。すぐ隣にカウチソファがあるっていうのに、俺も大和も一人掛けのソファから動かない。膝の上に跨った彼は、愛おしくて仕方がないといわんばかりに蕩けた目で俺を見つめながら、何度もスタンプでも押すように顔中にキスをしてくる。それからちゅうっと音を立てて俺の唇に吸い付いた。上唇を吸ったかと思えば、やわやわと下唇を食んで舐めて、また食んで。それは俺が催促するように口を開けて、大和の見た目よりもずっと柔らかな唇を舌でつつくまで続くのだ。そうしてようやっとぬるりと入ってきた彼の舌が我が物顔で口内を荒らす頃には、もう俺は何も考えられなくなってしまう。別段キスが特別上手いとかいうわけではないと大和本人は言っていたけれど、俺はいつだって彼にキスされるとぐずぐずの骨抜きになってしまうのだ。「っはあ、……可愛い、レオーネ、目がうるうるしてる」どちらのものかわからない唾液でぬらぬらと光る唇を舐める彼の目が捕食者じみた光を放っていた。頭がぼうっとして、自分が今どんな顔をしているのか分からないけれど、きっとだらしない顔をしているのだろう。「大和、もういっかい」思っていたよりも舌足らずで、甘えたような響きになってしまった自分の声が少し恥ずかしい。「レオって結構キス好きだよな」目尻や眉間に甘やかすようなキスをされながら、「アンタのキスは、なんかヤバいんだよ」と答える。大和のキスは、これでもかというほど愛が詰まっていると思う。なんてそんなクサくてこっ恥ずかしいことは絶対に死んでも本人には伝えられないけれど、彼のキスは頭がくらくらするほど甘くて、心底自分のことを大事に思ってくれていて、世界の誰よりも愛してくれているのだとよくわかるのだ。日々磨り減り空っぽになっていく場所が満たされていく、そんな感じがする。「ふは、なんだよそれ」くすくす笑って俺の頭を撫でながら、大和はまた俺の唇を食んだ。
rewrite:2022.02.16 | アバッキオくんの魅惑の唇をみているとキスの話しか考えられません

清く正しくきらめいて

▼ 市原豊 / ofr

全国高校野球埼玉大会、三回戦目。崎玉なんとか勝ち進んで、次は西浦高校との対戦らしい。豊からのメールにいつもの如く返信はせず目を通しただけで閉じ、枕に顔を埋め息を吐く。ゆったりと訪れる眠りに目を閉じようとしたそのとき、ふと思った。応援、行ってみようかな。今まで一度も豊の応援に行ったことはない。豊は直接来てほしいと言ってきたことは一度も無いけれど、いつもいつも試合の度に何処で何処の高校とやるのかを知らせてくるから多分来てほしいのだろう。来てくれって言えばいいのに、言わないところが豊らしいとも言える。まあ言われても行くかどうかは分からないけど。「……行くか」そうだ、そうしよう。吃驚して、それから顔を真っ赤にするだろう。あいつ俺のことめちゃめちゃに好きだからな。その様を想像するだけで楽しくなってきて、鼻歌交じりに着替えを済ませ最低限の物だけ持って自宅出る。会ったらなんて言ってやろう。「あっちいなあ」真っ青な空を見上げ、帽子を被ってこなかったことを後悔した。崎玉側のスタンドには野球部部員たちの保護者がちらほら座っている。厄介なのもいるから絡まれても面倒だと一番後ろの列に座り込み、買ってきたお茶を一口二口。試合はもう四回表まで進んでいて、状況は四対零でうちが負けている。まあそんなもんだよな、うちの野球部はたいして強くないみたいだし。三回戦まで行けたんだから十分良いほうだろう、なんて、まだ終わってもいないのに俺は崎玉の負けを確信していた。そして予想通りの結末となる。コールドでうちの負けだ。「よーっす」反省会を終え、それぞれ着替えている崎玉高校野球部の面々に声をかける。保護者の方々にも頭を下げてとりあえず挨拶して、豊の前に立つ。「大和……」なんでここに、みたいな阿呆っぽい顔で俺を見つめる豊に思わず笑ってしまう。「応援しに来てやったんだよ」嬉しいけど来てほしくなかった、みたいな複雑な顔をする豊に、俺はとびっきりの笑顔で言ってやるのだ。「格好良かったぜ、豊」
rewrite:2022.02.16

流星にまみれた瞳のひと

▼ ジョセフ・ジョースター / jojo

俺が知るジョセフと皆がいうジョセフは少しばかり違うのだと気付いたのは最近のことだ。シーザーもスージーもジョセフはバカでアホでちゃらんぽらんでだらしがないだとか、強引で喧嘩っ早いだとか色々言うが、どれもいまいち俺にはピンとこない。確かにバカだアホだと思うところはちょっとばかしあるが、それもなんというか、彼らのいうようなものではなく、可愛らしい勘違いをして自分を責めるジョセフに馬鹿だなと思うようなそういうものだ。強引なところも別段ない。それどころかあいつは俺の言うこと考えることを優先ばかりするし、喧嘩っ早くもない。というかそもそも喧嘩したことがない。と、いうようなことをシーザーたちに話したところ、ポカンとした顔をされてしまった。それから二人してこそこそとなにやら話をし、少しにやついたような顔で詳しく聞かせろと迫られた。「へェ~~~~!スッゴイ愛されてるのね大和ってば!」「あー、それは俺も思う。この前結婚するか?て聞いたら号泣された」「えっ号泣!?」「そう。あいつさぁ、すっげえ料理下手なんだよ。でも俺に美味いもの食わせる為とかってめちゃくちゃ頑張ってて、なんかそれが超可愛くてさ。結婚するか?って」「言ったら号泣したのか」「した」あのときはすごかった。号泣して、しながら凄まじい力で抱き締められて、食べたばかりのものが逆流するどころか上半身の骨が粉砕するかと思ったくらいだ。それでも真っ赤な顔で泣きながら必死に頷くジョセフは堪らなく可愛かった。「最近は弁当まで作ってくれててさ、超尽くされてんのよ」可愛いでしょ、と言いながら今日のランチをテーブルへ広げていく。まだ少し焦げが目立つウインナーとスクランブルエッグとか、色々挟み過ぎて崩れかけているサンドイッチとか。「なんか、全然想像出来ないけど、ジョジョってばホントのホントに大和が大好きなのねェ」「あいつ、意外と不器用なんだな」俺のランチを覗き込みながらしみじみと言う二人が「結婚式には呼んでくれ」というので満面の笑みでもって頷いてやった。
rewrite:2022.02.18 | 乙男ジョセフくんって最高にかわいい。およめさんになりたいジョセフくん。

またたく間に会いたい

▼ 空条承太郎(四部のすがた) / jojo

昔からぬいぐるみとかレースとか花とか、甘くてふわふわとしたものが好きだった。小さい頃は似合うだとか可愛いだとか言われてそういったものに囲まれていても何も言われなかったのに、どんどん成長するに連れて、まるでそれが罪悪であるかのように言われるのだ。男のくせにそんなのをもって変だ、気持ち悪い。母だけは一緒に菓子を作ろうと言ったり、レース編みの本を渡してきたり肯定的だった。俺が何を持っていようが、まあ可愛い、と笑うのだ。その顔を見るたびに俺はどうして母のような女ではないのだろうと思う。母のような女であればレースやフリルのついたものを身に纏おうが、ぬいぐるみを持っていようが何も言われない。きっと年を取ってもそれは変わらないのだ。それを思うと、どう見ようが男以外のなにものにも見えない自分の体が心底嫌になる。なんだってこんな醜い体をしているのだろう。レースもフリルもリボンも何も似合わない、ぬいぐるみだって似合わないし、可憐な淡い桃色だってちっとも似合いやしない。だというのに、その人は美しい緑の目を柔らかく細めて微笑んで「よく似合ってる」と言うのだ。レースのリボンを頭の天辺につけた桃色のふわふわしたイルカのぬいぐるみや、ヒトデと貝殻の刺繍された縁にフリルのついた可愛らしいハンカチを俺へのプレゼントだと言って手渡して「気に入るようなら使ってくれ」と言うのだ。「承太郎さんには俺が女の子に見えんの?」またいつものように俺の部屋へやって来て、プレセントだというキラキラしたクラゲやクマノミのピン留めで俺の前髪を纏めていく承太郎さんにぽつんと聞けば、「見えないが?」と不思議そうな顔をした。「こんなの似合わないだろ。俺は可愛くもなんともないんだから」悲しくなって目を伏せれば、部屋に置かれた承太郎さんからのプレゼントが目に入る。ふわふわできらきらなものたち。「何を言ってるんだ、お前は凄くかわいいぞ」その大きな手で優しく俺の頬を撫でて上向かせながら、ぽっかり胸の真ん中に空いた穴を埋めるように言うのだ。「俺にはお前が、世界で一番かわいく見える」
rewrite:2022.02.18