千夜一夜の掃き溜め
▼ 宮田司郎
それを発見したのは宮田司郎が院長として勤めていた医院の看護師だった。
出勤時間になっても現れない宮田に何かあったのかと連絡を入れるも応答はなく、今までに無い事態に不安を覚えた看護師は宮田の家まで赴いた。
看護師が宮田の家に着いたとき、奇妙なことにドアが薄く開かれたままになっていた。そのことに不安を更に募らせながらも看護師は中に踏み込み、そうしてこの事件は発覚した。
看護師が宮田を発見したのは寝室と思われる場所で、最低限の家具しかない寝室は異様な様相を呈していた。
宮田はベッド脇に置かれた椅子に座り、不自然に上半身をベッドへ倒れこませていた。その時既に宮田は息をしておらず、死因は不明のままである。
そしてそのベッドの上に一人の人間が横たわっていることに看護師は気付いた。腹部から夥しい量の出血があり白いシーツが赤黒く染まっていたがしかし、その死に顔に苦痛の色はなく腹部の出血がなければただ眠っているように見えた、と看護師は証言している。
看護師からの通報で駆け付けた石田徹雄巡査は、後に宮田の手記を発見している。
以下、手記から抜粋。
『二月四日、あれは神様だったのかもしれない。
二月二六日、あの人に出会った。名は倉瀬皇一郎、まだ十五歳だと言っていた。家を飛び出して来たらしい。原因ははぐらかされてしまった。
三月四日、本屋で倉瀬さんと会った。今は宿を借りているらしい。
三月二八日、倉瀬さんが俺の家に住むことになった。世話になると言って微笑んだ彼はまるで天使のようだった。
四月五日、倉瀬さんと暮らすようになってから、ますます彼が何かこの世のものではない方のように思える。あの人は本当に神様なのかもしれない。
六月二七日、皇一郎様はきっと俺を少しからかったのだ。彼が俺を愛している訳がない、神は決して人を愛してはならないのだ。許されない。彼は俺如きに囚われてはならない。神様なのだから。まさか、全て嘘だというのか?俺が作り上げた虚像だとでも?馬鹿を言え、そんな訳がない。彼は神様だ。
六月二九日、彼は自分が神だということに気付いていない。記憶を失っているのだ。今夜、彼が神であるということを示し目覚めさせる。』
rewrite:2022.03.14 | 文字書きの為の言葉パレット(@x_ioroi)「手記・虚像・神様」