神も化け物の一つ


▼ 宮田司郎

誰もが彼に傅き平伏している。教会の者でも神代の者でもない彼を神の如く崇拝するのだ。たった十四歳の子供に村の者が挙って頭を垂れる様は異様なもので、初めてその様を見たときはただ気味の悪さを感じていた。
けれど彼にはそうさせるだけの何かがあったのだ。神と崇められるだけの圧倒的な何かが。それは人に希望を与え救いもするけれど、同時に心を惑わし破滅させるのだろう。

「貴方は毒のようですね。たった少しでも致死量になる猛毒だ」
「随分酷いことを言いますね、先生」

眉を下げて困ったような顔をして見せるけれど、この人は何もかも分かっていてやっているのだ。自分が毒になるとよく分かっている。

「貴方が何をしたいのか時々分からなくなる。人を嫌うくせに、どうして人と関わろうとするんですか」

自分を崇め平伏す者を酷く憎んでいるくせに、彼はそういう人間とより積極的に関わりを持っていた。

「どうしてだと思いますか?」

いつもの淡い微笑みが全てを覆い隠していたけれど、細められたその瞳を一瞬薄暗く冷たいものが鳥の影のように掠めていった。

「壊してしまいたい……」

その影を追うようにふと零れた俺の言葉に、彼は微笑んだまま何も言わない。

「何もかも壊してしまいたい、のですか、貴方は」

きっと遅効性の麻酔のようにじわじわと身動きを取れなくさせ、確実に捕らえてから地獄のような夢を見させるのだろう。自らが命を絶つまで、延々と。

「俺は神様なんかじゃないんですよ、先生」

淡く美しい笑みをのせたまま夢見るような声で彼は言う。

「でも皆、俺を神のように扱うんです。俺よりもずうっと年上の人間までもがたかが子供を畏れ跪くんですよ」

じっとりとした狂気を孕んだ目が緩やかな弧を描いている。

「あの人たち、俺に助けを求めるんです。俺に、自分たちを苦しめている張本人に。とても面白いでしょう?」

おかしくて堪らないとばかりに笑いながら彼が立ち上がった。目の前に立ち、見下ろしてくる彼の目はどろりとした沼のように濁っている。
彼の冷えた指が頬を撫でていく。

「宮田先生は?」

rewrite:2022.03.14