相対する嫌悪
▼ 市原豊
大和はときどきおかしくなる。
いつもはうんざりするほどぴったりくっついて甘えてきたり、反対に俺を甘やかしてみたり。始終幸せそうな笑顔を浮かべて俺と一緒に居る大和は、ときどき、何かのスイッチが入ったかのように突然おかしくなる。
「大和ー、帰んぞー」
大和は俺の部活が終わるまでいつも絶対に教室で待ってくれている。
待ってないで先に帰ってもいいのだと言ったとき、奴は少し寂しそうに笑って首を振った。俺と一緒に帰りたい、一緒に居たいのだと小さな声で言う大和に不覚にもときめいてしまい、その後は俺の方からから待っていてくれと言うようになっていた。
「大和?」
ぼうっと窓の外を眺めたまま振り返らない大和になんとなく嫌な感じを覚えながらも肩に触れる。
と、振り向いたその目にひゅうっと息が喉を落ちていった。凍るような冷えた瞳の奥でゆらゆら燃える薄暗い熱。
「大和……?」
情けなく震えた声に大和が笑ったと思った途端、がつんと米神に重たい衝撃を受け目の前に星が散る。ちかちかする視界と固い床の冷たさにああまたかと回らぬ頭の片隅で思った。
今日は一体どれくらいで終わるだろうかと考えながら、降り注ぐ痛みにただただ耐えてひたすら時間が過ぎるのを待つ。
滲む視界を閉ざし早く終われと念じていると、どれくらい経ったのか、大和が動きを止めた。
「……痛い?」
そうっと熱を持つ頬を撫でられ、ああ終わったのだと目を開けた。
「ごめん、豊」
そう言って大和は鞄を漁り常備している小さな救急箱を取り出した。腫れた頬に湿布を貼りつけ、切れた唇の端に絆創膏をくっつけて、痛みに涙が滲む目尻に唇を寄せる。
「豊はすぐ泣いちゃうね。かわいい」
愛おしそうに俺の頬を撫で何度も何度もキスを落としていく大和の目は、すっかりいつも通りだ。
それにほうっと安堵の息を吐いた拍子にまたぼろりと涙が落ちた。情けなくぐずぐずと鼻をならす俺に大和はくすりと優しく笑って、
「え?」
拳を振り上げた。ぎらりと目がひかる、
rewrite:2022.03.08