わたしの中の波のざわめき


▼ 三橋廉

静かに寝息を立てている廉をぼんやり眺める。ゆっくり呼吸にあわせて上下する胸の上にそっと手を置くと、心臓の鼓動が伝わってきた。
生きてる、そう思えば何故か無性に気持ち悪くなってしまって、胸に置いた手でぐっと肋骨を強く押す。このまま肋骨が折れて心臓に突き刺さり死んでしまえばいい、と体重をかけようとしたところで廉の目が開いた。
苦しそうに喘ぎ僕の名前を呼ぶ。

「おはよう」

廉の肋骨を圧迫するのを止め、流れた涙を指先で拭う。

「おっ、おは、よ……う」

彼のどもり癖が嫌いだった。

「ご飯食べる?」

あっちこっちに視線を彷徨わせながらもおずおずと頷く廉に苛立ちが募っていく。言いたいことがあるなら言えばいいし、聞けばいいのに。

「何食べたい?」

体を起こした廉の隣に腰を下ろしてなるべく優しく問いかけた。

「なんでも、いい、よ」

いつもと同じ、代わり映えの無い返答にじっとりと降り積もっていく。自分を落ち着かせるようにゆっくり息を吐いて、

「ん、じゃあ廉の好きなもの作ってあげる」

少し寝癖がついたふわふわの髪を梳き、微笑みをつくる。廉は僕の笑みに安心したように息を吐いて眉をさげてへにゃりと笑った。

「じゃあ作ってくるから待ってて」

これ以上傍にいると何をするか分からない。
早々にソファ立ち上がって台所へ向かい、無心で廉の好物を作れるだけ作っていった。

「はい、どうぞ」
「い、いただき、ます」

僕の顔色を窺いながら廉は料理に手をつけていく。野菜や肉類がどんどん口に運ばれていくのをぼうっと見ているとひどく気持ち悪くなってきてしまった。
生きてるみたい。なんか、嫌だな。
咀嚼する彼が気味の悪いものに見えて、気がつけばその口に含まれていた箸をぐっと押していた。

「ぅぐ、っ!」

廉の濁った声にハッと我に返り手を離すと、廉は慌てて口を押さえた。しかしどうやら間に合わなかったようで、どろりと先程食べたばかりのものが吐き出されていく。

「最悪」

吐き続ける彼にうんざりとした溜息が零れる。

「ちゃんと綺麗にしてね」

rewrite:2022.03.08