はしたないスカートの縁
▼ 高瀬準太
つい三日ほど前に右耳にピアスを開けた。開けたことに対した理由はない。妙な苛立ちと無気力感が綯い交ぜになった衝動と、後は大和が開けてみたいと言ったこと、そんなものだ。
「準ちゃん、ちょっと」
購買へ行こうと財布を持って教室を出たところで、大和が俺の腕を引き歩き出した。握られた場所から伝わってくる少し高めの体温になんだか変に緊張してしまう。
そうして連れてこられたのは三日前も来た音楽準備室だった。
「何するんだ?」
「ピアス」
「開けるのか?」
「んや、拡張してみっかなって」
大和のポケットから出てきた小さな袋には細長いドリルみたいなものがぽつりと鎮座していた。
「開けたばっかで全然安定してねえけどやってみようぜ」
「かくちょうって何」
「サイズ的にちょっと無理すっから血出るかもな」
なんだか恐ろしい言葉が聞こえた気ががするんだが。
「大和、かくちょうって何」
「ピアスの穴、広げてみよってこと。いいだろ?」
ピアスの穴を広げてどうするんだ、と思う間にピアノ用のふかふかの椅子に座らされ、開けたばかりでまだ熱っぽさのある耳朶に触られる。良いって言ってないのに。
「ピアス取るぞ」
じわっとした熱さとずるり内側が擦られるような感覚に、ぞくぞくとした妙な感覚が湧く。
「痛い?」
「平気」
「次は痛いだろうけど我慢な」
そう言うや否や、開けられた穴にあのドリルのようなものが勢いよく押し込められた。気遣いも何もあったもんじゃないそれに激痛が走る。
「いっ、だぁっ!?」
「我慢、我慢」
「っは…ぅう、んん、い、たぃ…!」
「あ~泣くな準ちゃん」
ぬるりとしたものが首を伝い、気持ち悪いその感触に眉を顰めると大和は心底楽しそうに笑った。
それから器具が突き刺さったままの耳朶に指を這わせ、悪戯に爪を立ててくる。
「ひっ、やめ、…い”!?」
いたい、でも、なんだかおかしい。止めさせようと大和の腕を掴んだ手に力が入らない。
「やだ、って、っん……!」
「気持ち良い?準ちゃん」
嘲るその顔に、くらりと眩暈がした。
rewrite:2022.02.28