ざらざらの上で丸まる


▼ 三橋廉

は俺の手や爪が好きらしい。いつも深爪気味に切っている爪の先なんかを気付いたらよくすりすり触っているし、肉刺だらけの俺の手を触ったり握ったりしてはにこにこしていた。
にそう言われて触られるのは結構恥ずかしいけれど、それ以上に嬉しくてどきどきする。俺もの節の目立たない綺麗な指や俺よりも小さくて柔らかい手が好きで、よく意味もなく手を繋いでは幸せな気持ちになっていた。

「れん」

ふと自分の名前を呼ぶ声が聞こえ、徐々に意識が浮上する。

「れん、廉、」

が俺の手をきゅっと握りながら囁くように名前を呼んでいた。

……?」

しょぼしょぼする目で時計を見れば、まだ昼休みの時間だ。どうしたのだろう、との方を見るといつもの優しいふわふわした笑顔で俺を見ていた。

「あのね、廉にお願いがあって」
「おねがい?」
「うん、廉にしかできないことなんだけど」

俺にしか出来ないこと、そう言われてパッと目が覚めた。
俺にしか出来ないお願いごと!

「な、なにっ?」
「あの……僕、廉の爪がほしい」

えへへ、とちょっと恥ずかしそうに笑うがかわいくて、俺もにやにや笑っちゃったけど、ちょっと待って。俺の爪がほしいってどういう意味だ。

「えっ、つめって、爪?」
「うん、廉の爪」

にこにこのに手を引かれ席を立たされる。

「ど、どこ行くの?」
「空き教室。もう用意してあるんだよ」
「え!?ど、な、なにするの」
「ちゃんと救急セットもあるから安心してね」

爪が欲しいってそういうことなのか?何かのたとえとかでもなんでもなくて、本当に爪を剥がされちゃうのか!?
もたもたしている内に準備してあるという空き教室に押し込められてしまった。

「ま、待って、あの、っ」

がくがく震える俺をは椅子に座らせ、あっという間にベルトみたいな物で腕を固定されてしまった。

「や、やめて、……」

ぼろぼろ涙が出てきて、は困ったように眉を下げた。

「泣かないでよ、廉」

震える俺の手をきゅっと握ってくれるけど、ベルトは外してくれない。

「大丈夫だよ、上手にするから」

優しく笑って言うけれど、全然、大丈夫じゃない。

rewrite:2022.02.24