折り目を合わせてただしい生活


▼ 島崎慎吾

文化祭で俺のクラスはコスプレ喫茶をやることになり、ホールもキッチンもやらない(やれない)俺は同じく役に立たない和己と共にせっせと看板作りに徹していた。

「どうよ」

顔面力の高い大和は当然ホール担当になったらしく、衣装合わせの今日、出来上がったものを見せにきてくれた。

「似合うだろ」

本物みたいな軍服に身を包んだ大和が床で作業をしていた俺を見下ろしている。
誰が選んだのかは知らないが大和にこれをチョイスしたセンスは天才的だ。頭から爪先まで完璧な出で立ちの大和にクラスメイト達は歓声をあげ、俺も心の中でそれはもう大歓声をあげた。

「似合ってるな」

なるべく普通に見えるよう笑えば、大和は不愉快そうに眉を寄せ鼻を鳴らした。

「違うだろ、慎吾」

磨き上げられた硬そうな革靴がどん、と俺の肩を蹴りつける。
唖然とした顔で俺たちを見るクラスメイトなどお構い無しに大和は倒れ込んだ俺に二発目を叩き込んだ。硬い革靴が思いっきり脇腹にめり込んで咳き込む俺を、大和は詰まらなさそうな、冷ややかな目で見下ろしている。
ああすごい、やばいかも、どうしようもなくゾクゾクする。
そうして全部見透かしている大和は底意地の悪そうな最高に俺好みの笑みを見せ、肉食獣みたいに舌舐めずりして、

「ほら慎吾、なんて言うんだっけ?」

と股間を踏みつけてきた。
痛くて、でも痛いだけじゃない力加減に半分勃ちかけていたのがますます元気になってしまう。変態、と大和はひどく楽しげに言い、踏む力を強めた。

「ぐぅ、っ!」
「あは、イイ顔だな」

うっとりするくらい甘い笑顔で、大和は痛みに酔う俺の顎をがつんと蹴り上げた。その拍子に舌を噛んだのだろう、口内に広がる血の味に顔を顰めれば滅茶苦茶に引いた顔の和己が視界に入った。
うっかり忘れてたけどここ教室じゃん?

「慎吾、お前……」

とかなんとか言ってるクラスメイトにああやっちまった、と思うけれど、大和が楽しそうだし何がとは言わないが色々大っぴらに出来るから。
まあいいか、なんて。

rewrite:2022.02.23