ひどくやさしい顔をして


▼ 高瀬準太

いつものように空き教室で昼御飯をつついていると、弁当箱に入っていたミートボールを準太が物欲しそうに見てきた。

「食べる?」
「いいのか?」

目をきらきら輝かせる準太が可愛くって仕方がない。

「じゃあほら、あーん」

嫌がるかと思ったが意外にも準太は素直に口を開く。
何も疑っていない顔で無防備に口をあけて待っている準太がもう可愛くて可愛くて、思わずミートボールではなく指を突っ込んでしまったのも仕方が無いことだろう。

「ん、ぇ?」

きょとんと目を丸くして後、不安げに瞬きを繰り返す。それでも決して自分から俺の指を引き抜こうとしないのは俺の努力(躾ともいう)の賜物だろう。
瞬きを繰り返し俺を窺う準太に微笑み、半端に入れていた指を奥まで差し込んでいく。舌の付け根を強く圧迫しながら更に遠慮なく奥へと指を進ませ、えずく様子にますます口角があがった。
準太の顔はどんどん不安げになって、嫌な感じに喉が波打ってくる。じわじわ目に涙がたまりだしてぽとんと落ちたところで指を引き抜いた。

「っぅ、え」

一際大きく喉が波打ち、急いで準太は自分の手のひらで口を覆うけれどもう遅い。

「わあ」

つい先程食べたばかりのものたちが次々吐き出され指の隙間から溢れ落ちていく。まだ原型を保っているものもあるだけになかなか気持ち悪い。
吐き続ける準太の背中を撫でさすり、さて、と息を吐いた。

「落ち着いてきた?」

肩で息をする準太にそう声をかけ、顔を覗き込みティッシュで口元をふいてやる。
あ~めちゃめちゃ泣いてる、かわいい。
濡れて光る目が不安と困惑にゆらゆら揺れている。

「じゃあ準太、“お片付け”しような」

吐いた物を指して笑う俺の意図をしっかり理解したのだろう、準太は絶望的な顔をしている。

「ほら、もったいないだろ準太。折角ママが作ってくれたんだから」
大和さん、あの、」
「準太なら出来るよな?」

何か言いたげに開かれた口は結局閉ざされ、代わりにまた涙が落ちる。準太は吐瀉物の前に膝をついて、身を屈めた。
ああ、ほんと、

「いい子だな、準太」

rewrite:2022.02.23