ふたりという機能不全


▼ 高瀬準太

「お前また怪我した?」

三人しかいないせいか妙に静かな部室に慎吾の声が響く。
見れば顔を顰めている慎吾と、練習着に着替えている準太のわき腹に出来た痛々しい青痣とミミズ腫れが目に入った。見ているだけでも痛々しいそれはまだ新しそうで、多分つい最近出来たばかりのものなのだろう。
どうもここのところこいつは怪我ばかりこさえてくる。体中あちこち、いつも満身創痍といった感じで特に背中が酷いのだ。
引っかき傷やミミズ腫れはだけではなく、切り傷やらどう見ても根性焼きとしか思えない火傷痕まで、一目で異常だとわかる尋常じゃない量の傷が群れを成していた。

「ああ、何でもないっすよ」

まただ、明らかに何でもないはずが無いのに準太はいつも至って平然とそう言う。

「お前さ、そんなんつくって何でもない訳ねえだろ」

もう我慢できないと慎吾が部室から出てようとする準太の腕を掴み、そのままベンチへと座らせた。

「お前どうしたんだよ、最近おかしいって」
「おかしいって言われても……俺は別に、」
「お前のその怪我、工藤大和とかいう奴と付き合いだしてからだろ」

慎吾の断定的な物言いに、そういえばと思い出した。
準太に好きな子が出来たと聞いて、それが男だと驚いて、幸せそうに相手の話をする準太を見ていると応援したくなって、あれよあれよという間に二人が付き合いだして、それからだ。準太が怪我ばかりするようになったのは。

「だからやめとけって言ったのに」

意地でも止めればよかった、と零す慎吾に疑問が募る。

「どういうことだ?」

準太とよく笑っているところしか見たことがなかった俺とは違い、慎吾は色々知っているような顔をしている。

「その工藤っていうの、あんま良い噂聞いたことないんすよ」

良い噂を聞かないその男が準太に怪我させている、と慎吾は暗に言う。

「準太、」
大和は関係ないし、別れたりしませんよ。それに練習だってちゃんと出来てるんだから別に問題ないでしょ」

俺たちを睨みつけそれだけ言うと、止める間もなく準太はそのまま部室を出て行った。重たい空気の中に慎吾の後悔の言葉だけが落ちていった。

rewrite:2022.02.23