あなたのためのわたしなんです
※赤司くんの双子兄主人公(「瞼の裏には何が潜む」if)
恋の病とはよくいったものだ。ぐったりと重たい身体をベッドに転がしたままゆっくり息をする。
皇一郎様のことを考えると胸が詰まって食事なんて喉を通らなくなるし、夜も眠れず寝不足になるし、何一つまともに熟せなくなる。おかげで学校を休む羽目になってしまった。
あの人は今、何をしているのだろう。この時間なら迎えが来るまで図書室で読書でもしているのかもしれない。
目を閉じればその姿はすぐに浮かんできた。
図書室の一番奥の机で黙々とページを捲くる白魚の指、冷ややかな彫刻の横顔を淡い光が照らし美しい陰影を作り上げる。彼がいるだけで、そこは映画のワンシーンのような完璧な空間へと変貌するのだ。
ああ、と零れた溜め息は熱に塗れている。
彼がつい最近借りていった本を鞄から引っ張り出し、付随された貸出カードに整った文字で記されている彼の名前をそっと指でなぞった。この本を貸し出した日は僕の当番の日で、目の前に皇一郎様が立ったときは本当に死んでしまうのではないかと思うくらい緊張し、眩暈さえした。赤く煌めく瞳が自分のことを見ている、そう思うだけで恍惚と優越と、どうしようもなく汚らしい劣情が湧いた。
思い出すだけでも何もかも蘇って、息が出来ない。皇一郎様、と譫言のように何度も呟いて枕に顔を埋める。熱を増した頭に浮かぶのはその姿ばかりだ。
あの人は今どうしているだろう、もう車に乗っただろうか、まだ図書室で本を読んでいるのだろうか。もしかしたら今日は迎えじゃなくて、赤司君を待っているのかもしれない。
あの二人は共に行動することが多く、度々部活が終わるまで彼は待っていたりもする。赤司君はほかの人間とは違い、あの人の隣に立つことを許されているのだ。
あの人に僕のような人間が近付けるわけがないと分かっているけれど羨ましくて仕方がない。彼と接点を持てる赤司君が、平然と傍に居られる赤司君が。
「赤司君なんて、いなければ良かったのに」
どろりとした粘着質な感情を細々と吐き出しながら、目を閉じる。
rewrite:2022.03.10 | もしもが兄が黒子くんと交流がなかったら。