ふたりのあいだに横たわる鋭利


じゃあなと言って手をあげ背を向けた青峰を見送り教室に戻ろうと踵を返すと、いつから居たのかすぐ後ろにもともと大きな目を更に開いたテツヤが立っていた。

「うわ!」

多少テツヤの影の薄さとかには慣れてきていたけれど、流石に背後に立たれると吃驚してしまう。
ばくばくと嫌な感じに鳴る胸を手のひらで押さえ落ち着かせてから再度テツヤを見た。

「どうした?」

薄く開かれた唇が戦慄いている。丸く見開かれていた目がすっと色を失くし、じとりと睨みつけるように形へ変わった。
テツヤがこんな目をするときは何かにとても怒っている時で、そういう時はとんでもないことが起きる時だ。

「テツヤ……?」

情けなく震えた自分の声を笑える程空気は軽くない。

「浮気、ですか?」

ぴんと張りつめた空気の上を滑り届いた言葉はなんだかよく分からないものだった。

「え?」

浮気とは何のことだろうか。そんなことした覚えもなければする予定も今後一切ないのだが。

「惚けないでください」
「惚けてなんか……」
「じゃあ!どうしてこんな、人気のないところで二人っきりで会ったりするんですか!?」
「二人っきりって、あいつはただの友達だし、」
「そんなの言い訳です!」

噛みつくように顔を近づけてきたテツヤの気迫に一歩引いてしまう。どうしてこんなに怒っているのか分からない。

「落ち着けってテツヤ、そもそもあいつ男だぞ?」
「だから何ですか?そんなの関係ないでしょう、だって現にあなたは僕と付き合っているじゃないですか!そうですよ、あなたは僕と付き合ってるんです、なのに、どうしてこんなところで隠れるみたいに会ってたんですか!?」

どんどん荒々しくなる声が俺を詰り責め立ててくる。

「僕のことが一番好きだなんて言っておいて、よくこんなことが出来ますね、酷い、酷い」

酷い、と繰り返すテツヤが顔を伏せる。ゆらりと揺れたその右手に、なんだか見覚えのあるものが握られていた。
あれは確か俺の筆箱に入っていたカッターじゃなかったか?

rewrite:2022.03.10 | 元ネタ:黒子テツヤに殺されるbot様、女子高生に殺されるbot