悲しみであなたを殺せたら
※赤司くんの双子兄主人公
彼の隣にいられること自体が奇跡に近いことだとは解っている。
けれど、一度隣にいることが当たり前のようになってしまうともう駄目なのだ。欲ばかり出て来て、何もかも把握していたくなって、彼が僕のものだという証明が欲しくなる。
「皇君?」
頬を撫でる風を感じて目を覚ました。カーテンがはためき、ちらちらと月明かりが暗い部屋の中を照らす。
隣にあるはずの温度は何処にも無く、シーツに触れれば僅かにぬくもりが残っている。まだいなくなって間もない。
滑るようにベッドを下りてベランダへ近付き、揺らめくカーテンを引けばそこに探していた姿を見つけた。身を乗り出すようにして下を見つめる彼の目は虚ろで夢見心地だ。
平たい無表情は冷たく、触れることすら躊躇ってしまうその姿はあの日見た、月明かりに照らされながら海で佇む彼を思い出させた。触れれば消えそうな背中が海に沈んだあの瞬間は、思い出すだけでも恐ろしさに身が震える。
「皇君」
震える指先を叱咤して彼へと伸ばす。肩を掴んで引き寄せれば強く抱けばやっと彼が目を覚ました。
「あれ、テツヤ……?」
不思議そうな顔をした彼は僕の顔と今居る場所から全てを理解して、ばつが悪そうに眉を下げた。
ごめんという謝罪は一体何に対してなのだろうと考えてはいけない。いままで目を背け続けてきた、どろりと腹の内で渦巻く色々な感情がちらりちらりと顔を出し始める。彼の謝罪に首を振り、早く部屋に入ろうと背を押した。
「明日も朝、早いんですよね?」
「うん、いつも通り」
すっと離れていくその背にひくりと指が蠢き、じりじりと焼き付くような感覚が責め立ててくる。
「皇君は」
彼が離れていってしまうだなんて、そんなの耐えられない。
「僕のこと、どう思いますか」
ひどく震えた声は掠れ、彼に届く前に潰えた。
「僕は貴方のこと、愛しています」
振り返った彼に焼かれ急き立てられた指が絡みつき、震えた喉の感触が直に伝わって自分の喉も震える。彼の瞳の奥で揺れる優しい色に、涙が落ちた。
ああ、なんて愚かなのだろう。
rewrite:2022.03.09 | 夢遊病の兄さん。 | 元ネタ:黒子テツヤに殺されるbot様、女子高生に殺されるbot様