どうかあなたの神様にしてください


彼が死にたいと口にする度に、その体のどこかが死んでしまっているような気がした。それは内側だったり外側だったりして、見えるときと見えないときがある。

「死にたい」

死んだらあの綺麗な星になれるの、といつだか今日のように美しい星々が輝く夜、彼は泣きながら言っていた。死にたい、と囁きながら彼はバイオリンを奏でるようにどす黒い色をした腕へ刃を滑らようとする。

「だめです」

死にたいと言う度、心は傷付き血を流し、同様に彼の外側も血を撒き散らす。
綺麗だった白い腕はもう随分と長い間血を流し続けたせいで汚く、歪なものへと変わっていた。それでも、僕はこの腕を綺麗だと思う。
彼が纏う柔らかなタオルケットで頬を伝う涙を拭ってやり、その手から彫刻刀を取り上げた。彼はいつも彫刻刀を使う。美しさを求める彼にとってはカッターなどという冷たく不粋なものは触れたくないのだろう。それか、自分を造り替えたいという気持ちの表れなのかもしれない。
瘡蓋の毟られた傷跡に消毒液をかけガーゼをあてて包帯を巻いていく。僕の手に彼の涙が落ちて、その冷たさに一瞬息が止まった。
死にたい、ともう一度彼が言う。

「それは、困ります」

綺麗に巻くことの出来た包帯の上をそっと撫で彼の顔を覗き込む。涙で濡れた睫毛がきらきらと光っていた。

君がいなくなってしまったら、僕は誰と好きなものを分け合えばいいのですか。映画やご飯もひとりきりだなんて、そんなのは嫌です。寂しい」
「テツヤくんなら、すぐに素敵な人を見つけるよ」
「見つかりません。君じゃないと僕は嫌です」

彼が死にたいと思う理由なんて僕には理解しきれなし、彼が感じるもの全てを把握できるわけでもないし、痛みだって解ってあげられない。
でも僕は彼のそばで、彼を支えたい。愛したい。

「僕には君の痛みや悲しみを理解することは出来ません。でも、君に幸せだと感じさせることは出来ると思うんです。だから、死にたいだなんて言わないでください。僕のために、僕の傍で笑っていてください。幸せに、させてください」

rewrite:2022.03.08