淋しさは眠たげにまばたく
征十郎の隣にいるといつも自分が消えてなくなっていくような感覚があった。彼の持つ様々なものが少しずつ、俺の存在を削り取っていっていくのだ。
あいつの幼馴染、というだけで俺まで同じような“天才”の部類だと思われ期待されることはもう日常茶飯事で、でも俺に“天才”でも“秀才”でも無いからいつもいつも失望される。価値のないものを見る冷え切った暗い目とのっぺりとした顔、それを目の前にすると決まって彼の隣にいる時と同じ、自身が透けてなくなっていく感覚に蝕まれる。
それが嫌で、失望されたくなくて必死に努力をしてもそれが必ず実を結ぶとは限らない。少し上手くなっても、俺より上手い、凄い人間なんていくらでもいる。
もしかしたらもっとたくさんのものと引き換えに死ぬほどの努力を積めば一軍にはなれたかもしれない。でもたとえそれだけの努力をしても一軍“止まり”なのだ。レギュラーになれることはない。
あの彼らを押しのけるには足りないものが多すぎる。俺は一生かかっても彼らと、征十郎と並ぶことは出来ないのだ。
それがわかってしまって、何をしても結局失望されることには変わりないのならば、これ以上何をしても意味はないのではないか。強すぎる光は視界を奪う。高すぎる志は道を閉ざす。
だから俺は、その時から彼の背を追うことをやめた。けれど心のどこかでまだ、彼に追いつきたいと、彼の隣に立ちたいと思っていたのだろう。だから多分、俺はまだバスケを続けているのだ。
「お、洛山勝ったって」
「やっぱりな、赤司いるしそりゃ勝つだろ」
「だよな。あ、聖司どこ行くの?」
「トイレ」
「迷うなよ」
「おー」
チームメイトの声を背にドアを閉める。
征十郎は、やっぱりすごい。あの緑間のいる秀徳に勝ったのだ。もしかしたらそれも、当然だと思っているのだろうか?
彼の考えはあの頃から変わっていないのか、それとも少しは変わったのか、試合を見ているだけじゃあそんなことまではわからない。だが確かめる術はもうない。
だって他でもない俺が捨ててしまったのだ、彼との繋がりも、何もかも。
rewrite:2022.02.18