まばたきの刃毀れ
触れようと手を伸ばせば細く頼りない肩が震えた。それから小さくごめんなさいと怯えた声で言う。
彼のこの、癖のような謝罪が僕はあまり好きではない。何に対するものか分かっていないのに、何がいけないのか分からないくせに、謝っておけばなんとかなるとでもいうかのように口にするのだ。
溜め息混じりに腕を下ろすとまた彼は肩を竦ませ小さく謝った。
「ねえ」
ちらちらと彷徨っていた目を覗き込むとじわりと怯えの色が滲む。
いつもそうだ、涼太やテツヤとは楽しそうに話しているくせに僕と話すときはいつもそんな顔をする。まともに視線を合わそうとはせず、何を怖がっているのか怯えた眼差しをあっちにふらふらこっちにふらふら、いつも泣きそうな顔をしてにこりともしない。
今も別にとって食いやしないのに身構えている。苛立って仕方がない。涼太たちに対する態度を僕にもとればいいのに。
「何が怖い?」
下ろした腕をもう一度持ち上げ伸ばす。
「ほら、また」
「ぁ、」
竦んだ体に笑えば、ひゅっと息を飲み体を強張らせた彼がまたごめんなさい、と吐き出した。謝ってほしいわけではないのに。
哀れなほど青褪めた頬にひたりと手のひらをあてればひんやりとした温度と微かな震えが伝わってくる。きっと涼太やテツヤがこうしてもこんな反応はせず、不思議そうな顔をして見つめてきたり、どうしたのなんて笑うのだろう。
拒むよう伏せられた睫毛も細かく震えていて、だんだんと苛立ちが悲しみへと変容していった。
「僕のこと、嫌い?」
姑息な僕は彼が否定できるわけがないということを分かっていてこんな聞き方をしてしまう。愚かで、哀れだ。
彼はあの、えぇと、と必死に何かを言おうと口を動かしていた。けれどその口から何が出てきたって、何を言わせたって、結局それは彼の意思じゃない。
一体自分は何をしているのだろう。いつまで経っても彼の頬は温まらないし、目が合うこともない。つまりはそういうことなのだ。彼は僕を受け入れてはくれない。
rewrite:2022.01.06