楽園の失墜
ふらりとやってきたその男は、泥沼の如く澱んだ赤い瞳を暗く煌めかせ神父を見つめた。
どろりとしたその目に浮かぶ色に神父は息を詰め、同時にその雰囲気から何かを感じ神父はその男を懺悔室へと案内した。
そうして黒いカーテン越しに聞こえ始めた話に神父は戦慄する。
「俺は人を殺めました。もう二週間も前の話です。俺にはとても大切な子がいて、その子はとても優しくて魅力的で、それ故に多くの人を惹きつけてしまう子だった。彼が俺を好いてくれていることは勿論分かっていたし、彼を疑う気持ちなんて微塵もありません。彼の中では俺が唯一絶対で、一番だと確信さえしていて、だから彼が誰と仲良くしようが別に構いはしなかった。だって結局、必ず俺のところに戻ってくるのだから。でも、それがおかしくなり始めました。あいつが、黒子テツヤが、聖司と仲良くなり出してから全てがおかしくなったんです。それまで彼の中の全てにおいて一番上に存在していた俺が彼の中心であるはずなのに、俺よりも黒子を優先するようなことがちょっとずつ増えていった。でもただの友達だって聖司は言っていたし、彼自身もそう思っていたんだろう。でもあいつは違った、あいつは、聖司を恋愛対象としてみていたんです。俺のものなのに俺から奪おうとしたんだ、笑えるでしょう?俺と約束のある日にわざわざ遊びの誘いをいれたり何かにつけて付き纏ったんです、友人を無下には出来ない聖司の性格に漬け込んで。許せないでしょう、もう見ていられないと思った。前々から忠告はしていたんだ。なのに聞かなかった。それどころかやってみろとばかりにヒートアップしたんです。信じられないでしょう、もう我慢出来なかった。それ以上はどうしても許せなかった。だから俺は自分の手であいつを殺しました。聖司を守る為に。あいつは死んで俺達の前から消えた。そのはずなのに、いるんです、ずっと。俺を笑ってる、馬鹿な人ですねって。今も俺のすぐ後ろで笑ってるんだ」
rewrite:2021.12.23