四足歩行の思考


赤司くんってカッコいいよね、あーわかるわかる、ていうぐだぐだ始まったその会話内容はもう聞き飽きたものだ。

「やんなっちゃう」

彼が人気者なのはずうっと前からのことだし、それは承知していたことだけれど僕は自分が思っていた以上に独占欲が強くて忍耐力がない。
全中二連覇を達成してまた人気があがったようで、いよいよ僕は限界らしいのだ。いらいらしちゃって甘いものを食べても全然ダメで、これはいけないと彼にさり気なく僕以外に優しくしないで、なんて言ってみてもぜーんぜんダメなのだ。

「ねえ、征十郎くん」

本を読み耽る彼の肩に凭れ掛かる。
久しぶりに部活が休みだっていうのに、彼は本を読んでばかりでいやになる。

「どうした?」

やっと本から顔をあげた彼は優しく目を細めて僕を撫でる。真っ赤な瞳がきらきらしていて、苺のキャンディのようだった。

「あ、わかった」
「え?」
「征十郎くん、あのね、だいすき」

とびっきりの笑顔で言えば、彼もとびっきり甘くてお菓子みたいな笑みをくれる。

「僕もだよ、

するすると頬を撫でる、ひんやりした砂糖菓子みたいな白い指がゆっくり滑って唇に触れる。
少し顔を動かすだけでいい、がぶり。びっくりした顔をする彼ににんまり笑って、くっきり歯型がついただろう指を離す。どんっと体を押し倒して馬乗りになればあともう少し、火事場の馬鹿力なんて笑いながらぎりぎり力を込めて、

「すきだよ、だいすき」

くったりと動かなくなった彼に笑みを深めた。一体どんな味がするんだろう、きっと甘いだろう。
キッチンから包丁とスプーンを取ってきて、ぱちりと手を合わせた。

「いただきまあす」

力加減が良く分からず結構深くぱっくり口を開けた腕に唇をつけ、ちゅるりと啜る。とろりと溶けるような味わいに自然と笑みがこぼれた。
やっぱり甘くって美味しい。少し苦いような、鉄っぽい味もするけれど、たっぷりお砂糖を混ぜてゼリーになんてしてみたらとっても美味しいだろう。
うっとりしながらスプーンを握り、苺のキャンディに手を伸ばした。

rewrite:2021.12.22 | BGM:キャンディアディクトフルコォス / マチゲリータP