おさない恋の殻を割る


その焼却炉には様々なものが投げ込まれる。食べ物の袋やチリ紙といった只のゴミだけではなく、かつての友との思い出の品、悩みぬかれて書かれた恋文、想いの詰まったプレゼント、憎き恋敵の私物エトセトラエトセトラ。
物だけじゃない。友との決別の記憶や叶うことのなかった淡い初恋の記憶、選ばれなかった者の哀れな記憶、暗く湿った惨めな記憶、忘れ去り埋めてしまいたい思い出達もまた、この焼却炉に投げ込まれるのである。
これは墓場だ。毎度決まった時間に開かれる少年少女たちの墓場。

「またこんなところにいたのか」

まだ火の灯っていない焼却炉には既に多くのものが投げ込まれていた。
誰かの靴、可愛らしくラッピングされたプレゼント、手紙、ぬいぐるみのストラップ等々。

「やあ赤司くん。君も何か捨てに来たの?」

赤い髪が風に揺れますます炎めいて見える。

「いや、お前に会いに来ただけだよ」

ゆらゆら髪と同じ赤い双眸を揺らし美しい微笑みを浮かべた彼は、僕越しに焼却炉を見やった。特に何の興味もなさそうな目で哀れなモノ共を見、息を吐く。

、今日は一体何を捨てたんだい?」

少しだけ意地の悪そうな色を過ぎらせ、彼は口元を歪めた。

「さあ、何のこと?僕は何かを捨てたことなんてないけど?」

お道化るように大袈裟に肩を竦めて見せれば彼はふん、と鼻を鳴らし歩み寄って来る。
僕の脇を通り抜け、焼却炉の目の前までやってくると少しだけ身を屈め覗き込んだ。

「俺はお前が何かを捨てないところなど見たことがないぞ?ああ、これかな、今日のは」

すっと彼の白い手が拾い上げたのは淡い桃色に煌めく硝子玉だ。くっと喉の奥で何かが詰まった。

「駄目じゃないか、これは大切なものだろう?」

今度はハッキリと意地の悪い目だ。自分の顔が歪むのがわかった。

「……お前なんか大嫌いだ」

美しく煌めき様々な場面を映し出す硝子玉に心臓がきりきりと痛んだ。

「俺は大好きだよ」

だからほら、ちゃんと持っていて、と彼は僕が捨てた恋心をもう一度差し出した。

rewrite:2021.12.22