背徳を煮詰めて
※教師パロのようなもの
カーテンが引かれ電気の消された室内は薄暗く、しかしまだ昼間だということもあり不自然な明るさがあった。
少しだけ捲り上げたカーテンの下から生徒たちで賑わう南校舎を眺める。騒がしそうなあちらとは正反対にこの北校舎は静かだ。特別教室しかないここは授業以外ではほとんど人が来ない上に、校内で飛び交う霊の噂がここから人を遠ざけるのだ。
小さなノックの音にカーテンから手を離した。
「はい」
そっと窺うようにドアが押し開けられ待ち望んでいた顔がのぞく。
少しだけ不安げに下がった眉。入る許可を求めるような眼差しに笑みが零れた。
「おいで、薫」
椅子に腰かけ呼べば、そうっとドアを閉め錠を落とした彼が嬉しそうに近付いてきた。しかし一定の距離を保ち立ち止まり、じっと見つめてくる様は主人の許しを待つ犬のようで堪らなく可愛らしい。
手招くと素直に近寄ってきてくれるされるがままな彼の手を引き、いつものように膝に乗せた。いい加減に慣れても良いのに、柔い頬は真っ赤に染まっている。
「薫、こっち向いて」
きっちりと結ばれたネクタイに指をかけながら背を撫でて顔を覗き込めば、薄い水の膜が張った彼の目が羞恥と熱とほんの少しの怯えに揺らめいていた。
「大丈夫だよ、ここには誰も来ない」
人が近寄らない北校舎の、更に奥まった場所にあるこの物置と化した部屋は火事でも起きない限り誰も来ない。だから選んだのだ、彼と会うにはもってこいの場所だから。
「でも、先生……」
「薫は心配性だね。一体誰がこんなところに人がいるだなんて思う?誰も思わないよ」
結び目にかけた指に力を込めするりと解く。
あ、と小さく声をあげた唇を舐めあげてしまえばもう彼は何もかも投げ出してしまうのだ。
「せんせ、すき」
熱に浮かされたような、けれど酷く泣いてしまいそうな切羽詰まったその声に、俺はいつもどうしようもないほどの悦びを感じてしまう。
「俺もだよ、薫」
苦しそうに眉を下げた彼の頬を安心させるように撫でれば、途端にとろりと蕩ける。そうして零れだす甘く爛れたものに俺たちは揃って溺れていくのだ。
rewrite:2021.12.22