さみしいとさみしいを束ねて


何もかも嫌になってしまうときがある。やること全て無意味に感じて、こんなことをして一体何になるのだろうと力が抜けてしまうのだ。
無味無臭の勝利をただ消費して、自分は一体どうしたいのだろう、と。どこを目指して歩いているのか分からなくなるって、ふっ、と見えていたはずの道も案内板も消えてしまって、ただ真っ暗な中にたった一人為す術もなく立ち尽くすのだ。
ぼんやりとベッドから眺めていた朝の天気予報が雨を告げ、途端に体がずしりと鉛のような湿った重さを纏った。あ、と思ったときにはもう見えない。世界から切り離されぼんやりと視界が霞む。
重みに耐え切れなくなった体が柔らかなマットに沈んでいき、枕に埋もれ半分になった視界は夢でも見ているかのように安定しない。妙に寂しくなって、けれど縋れるようなものは何もなくて、鼠色の思考が意味もなくくるくると回り余計なことばかり考えてしまう。
ああ、嫌だな。
ぐっと息を詰めてきつく瞼を閉じてもすっかり目覚めてしまった体じゃあ夢を見ることすら儘ならず、足元から崩れ落ちていく感覚がする。そんなもの味わったことない癖にそんな感覚が襲ってくるのだ。
どんどん落ちていく。底にはいつになってもつかなくて、きっと底なんてものはないのだろう。
逃れるよう伸ばした手に触れた冷たい端末が攻撃的にさえ思う電子音を鳴らした。電話というものはどうにもすきになれない。
いつまで経っても途絶えない音がわんわんと脳内で反響し増幅していく。

「……はい」

うんざりしながら碌に名前を確かめずに耳に押し当てた。

『Good morning,Darling!』

電子的な雑音を含んだ声にふっと息が入り込む。

『今日休み?いつもの病気か?』

何にも考えていないような、青天の声が眩しい。

「ああ、いや……うん」
『はは、どっちだよ。まあいいや、今からそっち行くから』

返事なんて待たずに一方的に切られた電話を離し息を吐く。
あと数分もすれば嵐のようなあの男がやってきて、あっという間に何もかも吹き飛ばしてしまうのだろう。
なんだか無性におかしくなって笑ってしまった。

rewrite:2021.12.14 | BGM:或る街の群青 / ASIAN KUNG-FU GENERATION