星に願うより早口で
最近部活が忙しいのはわかるけれど、僕のことをいささか放置しすぎじゃあないだろうか?
彼が色々と頑張っているところはすきだ。目の前の立ち塞がるものをどんどん崩し均して邁進する姿は惚れ惚れとする。
でも、少しくらい僕のこと構ってくれてもいいのでは?昼くらい一緒に食べたいと思うし、夜ほんの少しでいいから電話したいと思う。そりゃあ部活で疲れているのは分かるし、僕の我儘だっていうのも分かっている。
でもやっぱり寂しいものは寂しい。征十郎くんは寂しくと思わないのだろうか。そんなこと思ってる余裕もない?
今日も昼は別だろうか、と思いながらふと見下ろした窓の外に真っ赤な髪を見つけた。征十郎くんだ。何してるのかと窓を開けてみればなんてことない、ただの愛の告白である。
「はあ?」
なんだあれ、超ムカつく。苛立ち過ぎて吐き気すらしてきた。
呼び出しに応じる時間はあるのに僕に構う時間はないって?
「赤司!」
窓から身を乗り出して叫べばびくりと眼下で彼が肩を震わせた。顔をあげた彼に今すぐ上がって来いと告げ、ぴしゃりと窓を閉めた。
廊下にいた他の連中のざわざわとした視線が鬱陶しい。
「っは、薫?どうした……?」
全力で走ってきた征十郎くんは息も髪も乱れていて、なかなか見れない姿にちょっとだけ優越感を抱いてしまう。
「あのね、征十郎くん」
征十郎くんの正面に立ち一歩近づくとひくりと肩が震えた。何をそんなに怯えているんだか知らないけれど、その反応すら今は苛立たしい。
もう、ほんと許さないんだからな。
「すっごい、」
キュッと靴底を鳴らしながら彼に近付いて無理矢理後ろを向かせ、その両腕をぐるりと回しあげる。前傾姿勢になった征十郎くんの意外と広くて格好良い背に飛びつき無防備な膝裏に足の甲を引っ掛ければ、
「ムカつく!」
僕でも出来るお手軽プロレス技、パロ・スペシャルの完成なのである(何かあればこれで絞めあげなさいと僕はパパに習ったのだ)。
ぎりぎり締め上げながら「これから一週間何でも言うこと聞くというなら許す」といえば、一も二もなく彼は頷いた。
これで許してあげるなんて僕は彼に甘すぎるかもしれない。
rewrite:2021.12.12