十中八九のてのひら
見る目がないというか、どうしてそんな子を、というのばかり彼はすきになる。どうしようもなく馬鹿でどうしようもなく駄目な、それはもう本当にどうしようもない人間ばかりなのだ。
「どうしよう赤司」
そうして決まって、何かあると僕のところにくる。
今にも泣いてしまいそうな顔をしてどうしようもない女の話をする彼に些か殺意すら覚えてしまう。だからあんなのは止めておけと言っただろう、なんて言ったところで、でもあの子は、だけどあの子は、とああでもないこうでもないと要らぬフォローをしだす始末だ。
彼が選ぶ女もどうしようもないが彼自身もどうしようもない、お手上げである。
「今度はどうした」
けれど僕は毎度毎度律儀に相談に乗り、アドバイスを出し、なんとかなるようにしてしまう。
何故か、理由は至って簡単だ。馬鹿馬鹿しいことに、このどうしようもない男に僕は恋なんてものをしてしまったのだ。全く何がどうしてそうなったのか自分でも一切合切理解出来ないけれど、彼を見れば脈は荒れるし話せば一日意味もなく笑ってしまいそうな気分になる。
「リストカット、してるみたいなんだ……」
今度はメンヘラ気取りか。どうしてこうも面倒なのばかり引っかけるんだ、勘弁してほしい。
「いつから」
「結構前からって言ってた。今朝包帯巻いてて気付いたんだ」
「傷は見たのか」
「見てない」
「安心しろ、ただのフリだ。包帯を取ってみろ、傷なんざ一つもないだろうな」
何で分かるんだと言いたげな顔に溜め息が出る。
どう見てもあの女はそういうタイプの人間だろうに何故分からないんだろうか。あんなのと付き合っていても良いことなどない。それどころかマイナスしかないだろう。さっさと別れてしまえばいいのに。
「全く、見る目がないな、聖司は」
さっさと別れて僕と付き合えばいいのに、なんて言ったところで、また冗談だと流されてしまうんだろう。いっそ既成事実でも作ってしまえば彼も少しは真剣に考えるのだろうか。
rewrite:2021.12.12