永遠はここにあるべきだから
桜の木の下には死体が埋まっているという。
俺の家のすぐ近くの神社には、とても立派な美しい桜の木がある。小さい頃から俺は暇さえあれば神社へ出向きその桜を眺めていた。花が咲いていようが散っていようが構わない、桜はただそれだけで美しいのだ。
赤司征十郎と会ったのもそんな時である。
入学式の帰り、神社でいつものように桜を眺めていた俺の目の前に赤司は突然現れた。
燃えるような赤い髪と色の異なる瞳。赤司を見たとき俺は純粋に綺麗だと思った。桜と同じ、ただそこにあるだけで美しい。
「桜が好きなのか」
赤司が初めて俺に投げかけた言葉は確かそんな感じだった。それを皮切りに空が暗くなるまで俺たちはずっと話をした。
そうしてその日から赤司はふらりと神社に現れるようになり、会えば延々と中身があるのかないのか分からない他愛もない話をするようになった。
不思議な話で、俺も赤司も学校ではお互いに声をかけなかった。話をするのはこの神社でだけ。暗黙の了解とは少し違うけれど、そんなようなものがあったのだ。
それを俺は今日、破った。
「赤司」
学校の敷地内に咲くあまり大きくない桜の木の下を歩く赤司は、そのまま花びらと共にどこかに行ってしまいそうに思えた。
俺の呼びかけに赤司は何もかも分かっているというようにただ頷き、黙って俺の後を着いて来る。
「東京に戻るんだってな」
いつもの神社、桜のよく見える柵に並んで腰を下ろす。
これも最後だ。赤司は東京の大学に行き、俺はこのまま地元の大学に進む。赤司ともうこの神社で話すことはない、そう思うとなんだか無性に寂しくなって、苦しくなった。
「ああ」
桜を見上げる赤司の横顔はとても美しく、手放すことなんて出来ないと強く思わせる。会話もなくただ並んで桜を眺め、そうして日が傾き辺りが橙に染まり始めたころ、漸く俺は本題に入ることにした。
だが赤司は俺が口を開くより前に、これから何を言うのか分かっているというように柔らかく微笑んだ。
「いいよ」
「そうか」
これでもう、大丈夫だ。寂しくはない。
ここに来れば、毎日会えるのだ。
「またな、赤司」
桜の木の下には死体が埋まっている。
rewrite:2021.12.08