運命を宝石にして胸に飾るなら


実を言うと、恥ずかしながら俺は“運命の赤い糸”というものを信じていたりする。俺の小指からのびる糸が誰に繋がっているのかなんて見えないし確認も出来ないけれど、それは確かに実在すると何の根拠もないけれど信じてきた。
勿論、今現在もだ。
そしてその糸は、大和に繋がっている。確実に。断言できる。
何故ならば俺の糸が彼に繋がっているという確固たる証拠があるからだ。
例えば席替え。今日のロングホームルームで俺のクラスは席替えを行った。彼に必然的な恋をしてしまった入学式から今日まで、俺は一度だって彼と座席が離れたことはない(出席番号順の座席は除くが)。必ず彼の座席の前後左右斜め、その何処かが俺の座席であった。
そして今回も当然ながら俺と彼の間に何らかの力(運命の力だとか引力だとか、そういったものだ)が働いて、俺は何度目かわからない彼の隣を引き当てたのである。
これを運命と呼ばず何と呼ぶ?俺の糸が彼に繋がっていないとしたらこんなこと絶対に有り得ないだろう。

「また隣なんだな」

席を大和の左斜め後ろから左隣に移動させると、彼はパッと花が咲き乱れる笑みを浮かべた。その可愛らしい笑顔に自然と口角があがる。

「ああ、よろしくな」

事あるごとに引力が働いたおかげで俺と彼はかなり親密になったといえる。親友の一歩手前、といったところだろうか。
しかしそのポジションは俺が望んでいるものではない。まぁ、いつも人と距離を置く彼が俺だけに気を許してくれるのは非常にありがたいのだが、俺は“大和の恋人”という場所が欲しいのだ。
運命の糸が繋がっているはずなのだからいずれはその地位を獲得するのだろうが、出来れば早い内に、なんて思ってしまうのは俺の我が儘だろうか。
ちらりと見た本を読んでいる彼の白い指に、栞の赤いヒモが巻きつけられていてどきりと胸が高鳴る。
小指ではなく中指だったけれど、それは俺が思い描いてきた赤い糸そのものに見えた。

大和、」

自然と口が開く。

「君は運命って信じるかい?」

rewrite:2021.12.06