流れ落ち燃え尽きても星だった


彼と共に育ったこの馴染み深い街へ戻ると、いつも最後に見た彼の顔を思い出してしまう。冷たく唇を引き結んだ少し強張った顔。真っ直ぐ突き刺す強い眼差しは少しも揺れなかった。
彼はあの時、僕に何を伝えたかったのだろうと今でも思う。最後、電車に乗った僕に彼は何かを言った。厚い硝子に阻まれ僕のもとへ届くことはなかったその言葉が何だったのか、僕には分からない。
拒むように靴の音を弾くコンクリートが、まるで彼のように思えた。
僕たちの間にはあまり言葉というものは無かった。無くても良かったのだ。そんなものが無くたって、僕と彼は自分を伝え合うことが出来ていた。
それが歪んだのは、きっと自分を殺した日だ。
あの日、己と共に彼との繋がりも殺めてしまったのだろう。だから何も伝わらなくなってしまった。手に取るようにわかっていた思考も、眼差しだけでの会話も、何もかも死んでしまったのだ。
伝えようとすれば伝えられたのだろう。
けれど、僕にも彼にも、相手に渡せる言葉の量が絶望的なまでに少なかった。僕も彼も、様々な言葉を知っているくせに投げかける言葉はそこに一つもなかった。
それでも多分、彼は必死に伝えようとしたのだろう。不器用ながら選び取って、投げかけてくれていたのだろう。
それを拾わなかったのは、理解しようとしなかったのは、他の誰でもない僕自身だ。
懐かしい、古ぼけた門にそっと手をかけた。ざらりとした感触が肌に刺さる。少し前まで毎日のように触れていたはずなのに、忘れてしまった手はその棘に慄く。
何もかもが自分を拒絶しているように思えて、少しだけ怖くなった。彼は一体、どんな顔をするだろう。あの強張ったような顔をするだろうか、それとも、笑いかけてくれるだろうか。
微かに震えた指でインターホンを押す。
僅かな間の後、無防備に扉が開かれた。
驚きに丸められた瞳は揺れ、薄く開かれた唇は震えていた。泣いてしまいそうに見えたのは、僕の願望かも知れない。

「やあ、久しぶり、大和

rewrite:2021.12.04 | 「そんな風にあなたを愛してみたかった」と繋がってたり