そんな風にあなたを愛してみたかった


どこでずれてしまったのだろう。
僕と彼は、これから先もずっとずっと一緒にいるものだと思っていた。

「暑いな……」

空を仰ぎ見れば、木々の隙間から眩い青が見える。
五年前、夏休みに大和と二人でやって来たこの場所は今も何も変わっていない。初めての二人だけの遠出はとても楽しかった。たった二人で見知らぬ土地へやって来て、僕の親戚の家に泊まって、朝から晩まで周囲を探索して回って。
まだ、僕と大和が近かった頃。幼い時から傍にいて、どんな時も一番近くにいた彼が自分から離れてしまう日が来るなんて想像もしていなかったあの頃。

『征、はやく』
『そんなに急いだら転ぶよ』
『あ、征みて、川!』
『あ!大和、危ないってば!』

靴を脱ぎ捨て川へ降りてしまった大和を追いかけて入った川は驚く程冷たかった。僕も大和も楽しそうに笑って、魚を見つけてはしゃいでいた。
広いこの山は未知のもので溢れている。僕と大和で何日もかけて探索して、それでもまだまだ知らないところばかりだ。
ああ、なんて遠い。

『俺は洛山にはいかない』

強張った顔でそう言った大和の声は震えていた。

『違う、お前のそれは、間違ってる』

泣き出しそうな顔でそう言った彼の声も、ひどく震えていた。
蝉の音が耳鳴りのようにわんわんと頭に響く。
見つけた川はあの時と何も変わらない。この山も何も変わっていない。僕たちだけ、変わってしまった。

『なあ征』
『なあに』
『また来ような』

眩しい笑み。もう、僕に向けられることのなくなってしまったその笑みに視界が揺れる。家に戻ろう、と駆け出したその背に手を伸ばしてももう届かない。記憶の中でしっかりと繋がれた彼と僕の手に泣いてしまいたくなった。
ただひとり僕だけ、置き去りにされたように立ち止まっている。進むことも出来ずに迷子のように。
ああ、どうして僕はひとりでここにいるのだろう。どうして君は今、僕の隣にいないのだ。僕の手を引いてくれていた人は、もういなくなってしまった。
ああ、なんて遠い。

rewrite:2021.12.04