緻密な光
※豪華客船的パロ
目の前で崩れるように倒れた大和の姿に、赤司は息を止めた。世界から急速に音が消えていき自分の悲鳴染みた彼の名を呼ぶ声すら聞こえない。
胸に空いた穴から止めどなく、血と共に彼が流れていってしまう。真っ青な、平時の状態の赤司からは想像もつかないほど取り乱した顔で、彼は大和に開いた風穴を震える手で押さえた。
そんなことをしたところで何の意味もないということを頭で理解していても、感情は理解しない。
閉ざされた大和の瞼は少しも動かず、ぐったりと何もかも抜け落ちてしまったように何の反応も示さない。赤司は大和を抱きしめ、絶叫した。
「ああ、許さない」
赤司は不気味なほど静かな赤い瞳で船内の客室へ繋がる扉を開けた。
半端に開かれたドアの隙間から、己の震える右手を怯えた眼差しで見つめる緑間が見えた。
開け放たれたままのドアの向こう、ソファに座った青峰が酷い顔色で灰皿の中で燃える何かを見つめていた。
閉ざされたドア中から、黄瀬の泣き叫び懺悔する声が聞こえた。
階段前にある談話室の暖炉前に置かれたソファへ腰掛けた紫原の手の中には、ひとつの武骨な拳銃があった。
そうして再び上った甲板上。海原を見つめる黒子は多くが抜け落ちた白い顔でただ静かに泣いていた。背を向け、甲板から去ろうとしていた赤司の視界に薄い影が過る。
追うように振り返った先、苦しげに胸を押さえた彼の幻影が海を見つめる背を見つめる。ああ、と短く息を吐いた赤司はゆっくりと目を閉じた。
拳銃を握る手から手首に伸びる傷跡がふと目の裏に浮かぶ。薄桃色のそれは黒子が幼い頃に負ったと言っていた傷と似ている。
赤司はゆっくりと息を吐くと懐から銃を取り出し、海を見つめる背に向けて構えた。
「君は可哀想な人ですね」
振り向いたその顔は逆光で見えない。けれど笑っているように思えた。こちらを憐れむ様に。
赤司は何も言わず引き金を引く。
月明かりに照らされたその手には、手首まで伸びる薄桃色の傷が横たわっていた。
rewrite:2021.12.02