心臓を飾るオーガンジー


朝の快晴具合はどこへやら、滝の如き土砂降り具合に溜め息が出る。天気予報でも晴れだと出ていたので傘なんて持ってきていないし、いつも持ち歩く折り畳み傘は今日に限って無い。つくづくついてない日だ。
もしかしたら緑間が盲信しているおは朝占いで十二位だったのかも知れないな、と靴箱へ上履きを仕舞いどうしたものかと考える。どうせ待っていても止まないだろうから、このまま帰ってしまおうか。
とん、と爪先を少々苛立ち混じりに叩きつけて歩き出そうとした俺の背中に、聞き慣れた声がかかった。

「赤司?」

はっと振り返れば、きょとんとした顔の聖司が立っていた。

聖司……自主練でもしてたのか?」
「おう、早く一軍行きてーしなあ」
「こんなに遅くまで?」
「そういう赤司こそ」
「俺はメニューを作っていたんだ」
「ああ、どーりで黒子たちがいないのわけか」

うんうん、と頷き靴を履き替えてから、あっとまた顔をあげる。

「赤司、傘は?」

首を傾げるその仕草に一瞬胸が高鳴る。それを抑えて「残念ながら」と首を振ると「なら一緒に帰ろうぜ」とにこやかな笑顔がかえってきた。
なら、とは、どういうことだ。

「俺の傘でかいし、赤司なら入るよ」

紫原サイズになると厳しいけどと続けた彼に、一瞬思考が停止した。
それはつまり俗にいう相合傘なんてものではないのか。ちん、と脳が出した結論にくらりと眩暈がした。
ああもう、そういう期待させるようなこと、しないでほしいのに。もしかしたら、なんていう信用出来ない低すぎる勝率には掛けたくないのだ、どんな未来が待っているのか分かってしまっているから。

「いいのかい?」

彼がマネージャーである桃井に好意を寄せているのは知っている。

「もちろん!」

きっと俺の想いが叶うことなんて一生来ないということも知っている。

「じゃあ入れてもらおうかな」

それでもそうやって優しくされてしまうと、奥底で眠る絶望的な程小さな希望に縋ってしまいそうになる。もしかしたら、なんて、有り得ないというのに。

rewrite:2021.12.02