夢の残り火
巻きついた指が離れない。くっついて、溶けて、繋がってしまったのかもしれない。彼の顔がどんどん赤くなり、苦しそうにもがく彼の指が爪を立ててくる。手を離してあげたいのだけれどどうやらくっついてしまっているようで、離せない。
ごめんね、ごめんね、呟く声は嗚咽に溺れてきっと彼には届かない。
どうしてこんなことになっているのだろう。ついさっきまで戯れるように触れ合っていたというのに、あんなに幸せだったというのに、今僕は堪らなく不安で悲しくて悲しくて仕方がないのだ。
訳の分からぬ薄暗いものが後ろから迫っていて、逃げることなんて出来ないとは分かっていても逃げ出したくて、そうしたら指が、くっついてしまった。
「―――」
遠くから音が聞こえた。
何の音だろう、優しくて温かくて泣きたくなるようなこの音を僕は知っている。これは、
「―――、薫っ」
はっと息を吸いこむように目が開いた。
「薫、大丈夫か?」
ああ良かった、と安堵の溜め息を吐いてゆっくりと僕の頭を撫でる手。まだどきどきしている。
身を起こし渡された水を飲む僕を撫でながら心配そうに彼は眉を寄せた。
「随分魘されていたけど何の夢を見ていたんだ?なかなか起きないから心配したよ」
まだ不安に強張り震える僕を落ち着けるよう優しく抱き締めてくれる。彼の胸にひたりと耳を寄せれば確かに聞こえる規則正しい心音に安心した。
「憶えてない……でも」
怖かった、どんな夢を見ていたのかもう何一つ憶えていないけれど、とても怖かった。
「そう……でも大丈夫だよ、それはただの夢だ」
「……うん」
背を撫でる手に目を閉じる。温かい。
けれど足の先がひどく冷えている。何かが絡まっているのだろうか、薄暗い、そうっとくっついて離れない不安のような嫌な冷たさがあるのだ。
「征、ねえ、怖い」
這い上る。
脳裏を一瞬掠めた光景は、夢だろうか。
「征、怖いよ」
とても嫌な感じがする。彼にそれを伝えたいのに上手く伝えられない、逃げられない。
「征」
目の前で苦しげに喘ぐあなたが見える。
rewrite:2021.11.23