だめかもしれない


「きらい」

拗ねたように唇を突き出し、は言った。

「きらい」

僕以外のことを考えるあなたも、僕以外に触れるあなたも、僕以外を見るあなたも、

「きらい」

ばか、と舌足らずな話し方をしながら下から睨み付けてくる。
涙の膜できらきら光る瞳が綺麗で、状況を忘れ思わず見惚れてしまった。ぼうっと見つめたまま何も言わない僕には眉を吊り上げる。

「聞いてる?もう、どうでもいい?」

自分の発した言葉に悲しくなったのか、ぐっと泣きそうな顔になる。

「聞いてるよ、ちゃんと聞いてる」

そうっと今にも零れてしまいそうな涙を人差し指で拭うとぱっと頬が色づいて、眉間に皺を寄せたと思うと俯いてしまう。

「ばか、ばか征十郎。ばかばか」
「うん」
「……ばか、きらい」
「僕はすきだよ」

こういうことは慣れていないからなんだかとても恥ずかしい。少し穴があったら入りたいと思ってしまうくらい恥ずかしい。誰か僕を埋めてくれやしないか。

「じゃあなんで僕のことちゃんと見てくれないの」
「見てるよ」
「うそ」

ぐずぐず鼻を鳴らして唇を噛んだ彼がもう一度嘘、と繰り返した。涙で滲んでいるのに、その声はやけに鋭い。

「それはただのふりだよ、見てるふり」

分かってるくせに、とじとりとまた下から睨み付けられる。
その視線に、その目の中に垣間見えたものにぞっとして息を飲んだ。一瞬、僕の知っているじゃなく何か別のものに見えたのだ。

「嫌い、そんなの嫌。僕は欲張りで我が儘だって知ってるでしょ?」

涙の残骸で煌めくひんやりとした黒曜が、皮膚の上を滑る。

「僕って馬鹿なの、どうしようもないくらい。だからどうすればいいかなんて分かんないし、そういうのって疲れちゃうからあんまり考えたくない」
、」
「どうしよーって思ってた時に思い出したの。征十郎が見なくなったのって、そうなってからでしょ?」

すっと白い指が左目を指す。すぐに下ろされた手は彼のポケットへと引っ込んでいった。
何か、とても嫌な予感がする。

「だから、それがなかったらまた見てくれるのかなーって思って」

あまり見ることのない、鋭い切っ先が向けられた。芸術家のように握られた彫刻刀が、真っ直ぐ、

rewrite:2021.10.10