憂き夜にいとしい子守唄


※どっかの山村パロ

ひとつまた隠す。
嬉々と語られた話を思い出しながら空を仰いだ。沈みかけた日が目を焼く。
ひとつまた消える。
可哀想に、なんて薄く笑って闇を湛えはじめる山道を下った。


「―――!」

誰かの大声と落ち着かない空気に目が覚めた。
窓から差す日は高く、随分長いこと眠ってしまっていたと知る。気付かなかっただけで相当疲れていたのかも知れない。寝間着から着替え戸を開けると村の人々が集まって何やら騒いでいた。
一体何の騒ぎだ、なんて嘯いてその輪の中に入れば、

「赤司君!」

焦りの滲んだ水色が向こうから駆けて来た。

「テツヤ。この騒ぎは何だ?」
「それが、あの、またいなくなったんです、今度は黄瀬君がっ」

また。

「また、か。これで四人目、だったな」

四人。
数日、たったの数日で村から四人もの人が消えたとあって村内はまさしく天と地がひっくり返ったような騒ぎに満ちていた。
男衆で捜索に出ても何一つ見つからず、古老たちは神隠しだと騒いでいる。

「……大和君、相当参っているみたいで」
「ああ……あいつ、涼太と仲が良かったからな」

涼太だけじゃない、今までいなくなった者共は皆彼と親しかった。
そのせいで今、彼は謂れのない非難の的とされ半ば村八分のような扱いを受けている。

大和はどうしてる?」
「家にいると思います。あの……」

ぐっと言葉を呑み込んだテツヤに微笑み、大丈夫だと頷いた。

「出発は何時か決まったのか?」
「いえ、まだ」
「なら、決まったら知らせに来てくれ」

背を向け、真っ直ぐ彼の家へ向かう。
可哀想に、きっとまたどうすることもできない自分を責めて泣いているのだろう。村内のあちこちで囁かれる呪われた噂を抱えて。
悪戯に荒らされた戸を三度叩いて押し開ける。

大和、入るよ」

返事はない。
また寝間にでもいるのだろうと勝手に上がり込み奥へと行けば、やはり彼はいた。

大和

さめざめ涙を落とす彼の青い顔が可哀想で、そうっと震える肩を引き寄せ強く抱き締める。僕の体温で少しでも安心するように、と。

「大丈夫、涼太は必ず見つかるから」

なんて嘯いて、涼太から贈られたのだろう枯れ落ちた花を踏みつけるのだ。

rewrite:2021.10.10 | BGM:愛に奇術師 / 電ポルP