絶対に正しい孤独


※赤司くんの双子兄主人公

何人たりとも皇一郎に近寄ることは許さない。いや、許されない。彼の傍にいていいのは僕だけだ。

皇一郎はお前などが近寄って良い人ではない」

既に動かなくなっているそいつにそう吐き捨て、止めを刺す。
ある程度頭の良い人間は自分の立場を理解し彼に近寄ることはない。だが今目の前で虫の息で這い蹲るこいつのような頭の悪い奴はごまんといる。
そいつらは自分がどれだけ低能で屑な存在なのかをてんで理解していない。だから皇一郎のような人間に気安く声をかけ、触れ合おうとする。

「身の程は弁えた方が良い」

もう殆ど聞こえてなどいないだろうし意味が分かっているのかどうかも怪しいが、そいつが何度も頷くのを見てから踵を返す。
ああ早く戻らないと。きっと皇一郎はもう教室に来ているだろう。
上履きに履き替え階段を駆け上がり、見えてきた教室の外、自分よりも尚鮮やかな赤い髪を見つけた。目を伏せ佇む、たったそれだけでも絵になるその人にちらりちらりと視線が投げ掛けられ、けれども声をかける者はいない。
そう、それでいいのだ。



長い睫毛が持ち上がって、美しい宝石が僕を捉え煌めく。
ほうっと溜め息が落ちてしまいそうな輝きにうっとりと目を細めながら手を伸ばし、白磁の頬に触れた。くすぐったそうに笑う姿に眩暈がしそうだ。

「征、どこ行ってたの?」
「ただの呼び出しだよ」
「征は人気者だねえ、焼いちゃう」

冗談めかした口調で皇一郎は笑う。
僕の呼び出しじゃないよ、と心の中でそっと呟きながら僕も笑った。皇一郎は何も知らなくていいのだ、あんなものに心を割く必要はない。

「じゃあ帰ろうか」
「そうだね」

慣れたように、揺れる白い手を掬い上げて絡めれば視線たちの中に羨望じみたものが混じる。それをいつものように流しながら隣を見れば、僕の視線に気付いたその赤い瞳がこちらを向いた。
どうしたの、と柔く細められたその目の中には僕しか映っていない。

「なんでもないよ」

これからもその瞳に映るのは僕だけだ。それでいい、彼の隣に立つことは僕にだけ許されるのだから。

rewrite:2021.09.20