残された泥でつくるタイトル


▼ 寿嶺二

燃えるような恋でした。
どうしようもなく恋焦がれ、狂おしいほどに追い求めていました。彼はボクの世界の全てだったのです。彼がいればそれ以外は何もいらなかった。彼がいて、その隣にボクがいて、愛してると囁いて、笑って、手を繋いで、抱き合って、キスをして。
他人にどう思われようが構わなかった。だってボクは、彼がいればそれだけでよかったから。
幸せでした。そう、本当に、このまま死んでしまっても良いと思えるくらいに幸せでした。
それは彼も同じです。
このまま二人っきりになってしまえたらいいな、なんてとっても可愛いことを言ってすごく幸せそうに笑っていました。自分たち以外の人類が皆滅んでしまって、地上に二人っきりで取り残される……そんな話をよくしていました。狭いベッドにくっついて寝転んで、一枚の毛布に二人で包まって朝までずうっと。
些細なことでも二人で共有すれば、途端に素晴らしいものに変わる。二人だけの秘密もたくさん作ってボクは彼との世界を構築していったんだ、誰も入れない、ボクと彼だけの……。
まるで箱庭のようでした。素敵で幸せなものだけを詰め込んで、醜く汚いものは何一つない。
彼は言いました。幸せ過ぎて死んでしまいそうだ、嶺二、て。甘くとけるような声で、これ以上ないくらい最高に綺麗な、ボクの大好きな笑顔で。
もうボクは彼がいなければ呼吸すら間々ならなくなっていました。彼のことを想うあまり、息の仕方も忘れてしまう。彼もまた、ボクがいなければ何も出来なかった。
お互い、相手がいないと何も出来ないんだ。それぐらい、ボクと彼は繋がっていた。

「ボクは彼を愛していました。愛していたなんて言葉じゃとても言い表せないくらいに」

彼を愛おしく想う気持ちは衰えることはなく、日に日に成長するばかりで、だから決めたんです。ボクは彼とのこの、完結した素晴らしい世界を完璧なものにするんだって。
朽ちることのない、永遠のものにしようって。

「だからボクは彼を殺しました。ボクと彼の、幸せのために」

地獄が待っているなんて知らずに。

rewrite:2022.02.16