身代わり角砂糖
▼ フロイド・リーチ
※not監督生、英名推奨、オクタ寮生
人の気配を感じて目を開け、それを少しだけ後悔した。
睫毛が触れてしまいそうな距離でじっとりとこちらを覗き込むオリーブとゴールド。そこから放たれる重たく纏わりつくものが、じわじわと首を絞めるようだった。
「……フロイド?」
掠れた小さな声でも、目と鼻の先のこの距離ならば届く。フロイドは一度だけ瞬きして、ゆっくりとその瞳を弓なりにした。
「おはよぉ、テディ」
おはよう、なんていう時間ではない。
少々日差しのわかりにくい水中の寮内だとて、明暗の差は多少なりともある。フロイド越しに見える窓の向こうも今は深海を思わせる暗さがあるから時計なんざ見なくてもド深夜だろうことは窺える。
いつものフロイドならば夢の中で目一杯暴れているであろう時間だ。
どうしたのかと声に出さずとも伝わったのだろう、あんねぇ、と瞳と同じ蜂蜜色の甘く蕩けた声が降り注いでくる。
「さっき変な夢見てさあ」
とろんと垂れた目尻を一層下げて、
「なんか心配になっちゃったから一緒に寝よ?」
と俺から少し身を離しながら言う。
夢ん中で、と今しがた見たのだろう夢の話をぽつぽつとこぼしながらフロイドは俺の返事なんざ聞かずに勝手にベットへ乗り上げ、タオルケットを捲り、隣へ潜り込んでぎゅぎゅっと抱き付いてきた。
俺がよく分からん魔法薬を浴びて、指の先から少しずつ甘いシロップになっていって勿体無いから舐めとっていたら、すっかり俺はシロップとなりフロイドに舐め尽くされて飲み込まれてしまった。
要約するとそんなような夢を見たフロイドは、夢現のまま本当に俺を飲み込んじゃったかもしれないと思い部屋まで来たらしい。寝てる俺を見てやっぱり夢だったと分かったけれど、目を閉じてるからもしかしたら人形かも、とじっと観察していたらしい。
「美味しかった?」
「めちゃめちゃ甘かった」
「何の味?」
「ん~……幸せになりそうな味」
「ふぅん、俺も舐めてみたい」
「ダメ。テディは全部俺のだから」
蜂蜜舐めて我慢して、と言うフロイドはもうすっかりいつものフロイドに戻ったようだった。
2023.02.18