暮れない暗闇
小さい頃よく一緒に遊んだ男の子がいた。綺麗な水色の髪に水色の瞳をしていて、動くたびにその水色が光に溶け水のようにきらきらと光ってすごく綺麗だったのを覚えている。真っ直ぐで透明な眼差しがじいっと窺うようにこちらを見て、俺が笑えば彼も笑い、彼が笑えば俺も笑っていた。
彼と遊ぶときはいつも二人きりで、誰かと遊ぶときそこに彼がいることは無い。
不思議な子だったけど一緒に遊ぶのはとても楽しくて、二人で色々な遊びをしていた。一番多かったのは確か、影踏み。彼は影踏みが妙に上手くていつも俺は彼に勝てなかった。
懐かしい思い出だ。
そんなことをふと思い出したのは本屋に行った帰りにたまたま通った空き地がなんだかひどく見覚えがあるもので、何故だろうと考えたらなんてことはない。そこはよく彼と遊んでいた場所であったのだ。
昔、まだ小学生の頃、俺はこのすぐ近くに住んでいた。彼と出会ってまもなく引っ越してしまったけれど、つい半年前またここに戻ってきたのだ。
一緒に遊んだ彼は今どこに住んでいるのだろうか、と思ったところで彼の名前が思い出せないことに気付いた。あんなにたくさん遊んでいたのに忘れてしまったのか。
帰って母にでも聞いてみようかと一歩踏み出した時、視界の端を鮮やかな水色が掠めた。あれ、と振り返って見ても何もない。
あの懐かしい水色を見た気がしたのに。
「誰かいるのか?」
薄らぼんやりとした街頭の光を頼りに辺りを探れどそれらしい人影も何もない。気のせいだったのかと踵を返した俺の背後で、じゃり、と石を踏む足音がした。
「大和君……?」
記憶にある声よりもずっと低くなったその声をどうしてかすぐ彼のものだと思った。
懐かしいと思う感情と共に酷く嫌な感じがして振り返ることが出来ない。
「久しぶり、ですね、何年ぶりでしょうか」
こんなに優しい声をしているのに、体が動かない。
「会いたかったです、ずっとずっと。あなたがいなくなってから寂しかった」
じゃり、と足音が近付いてくる。
「また影踏み、しませんか?」
僕とあそびましょう、と背後で何かが笑う。
rewrite:2022.03.09