星を埋めるように


袖口から覗く、様々な場所に散っている傷を隠すように巻かれた包帯や湿布は白過ぎて少し眩しかった。保健室の固いベッドの上で小さく丸まり、声もあげずに泣いている姿に心臓を握りしめられる。

水緒

カーテン引いて外界を遮断しベッドに腰掛ける。
軋む音に彼の視線がふわふわと浮いてぴたりと僕を捉える。小さな掠れた声が弱々しく僕の名前を呼んだ。震えるその音に含まれた色に、彼をこうして保健室へと追い立てた人達への怒りがふつふつと湧いてくる。

水緒、誰に何を言われたんですか」

触り心地の良い髪を優しく梳きながら、彼の涙に濡れた瞳を覗き込む。傷付いた硝子玉はゆらゆら光を反射していた。

「……あの、あのね」

ぽとりぽとりと落とされる少ない言葉はどれも酷いものばかりで、僕自身が言われたわけではないのにきりきりと内側が痛み出す。すっかり涙で濡れてしまった睫毛を伏せ、痛みに耐える姿にこちらまで泣いてしまいそうになった。

「テツヤくんも、気持ち悪いと思う?やっぱり、いないほうがいいって思う?」

そう言った彼の声は、小さな布ずれの音にも負けてしまいそうなほど弱く、消えてしまいそうだった。

「そんなこと、思うわけないじゃないですか」

もし彼が消えてしまったら、そう思うだけでツンと鼻の奥が痛くなってしまうというのに。
彼は決して他人を傷付けないのに、彼の周囲は平気で彼を傷付け甚振る。そのせいで彼は自分が全て悪いのだと飲み込み、罰するように自分を傷付け心のバランスを取って生き難いこの場所で必死に息をしている。
それをどうして気持ち悪いだなんて言えるのだ。

「君がいないと僕は寂しくて死んでしまうんですよ」

少しだけ冗談めかして笑えば、ようやく彼がほんのり笑った。
きらきらと光る涙の痕が優しい色に変わって彼の頬を彩る。頬にあてた手に彼の手が重なり、ぎゅうっと握り締められる。

「ありがとう、テツヤくん」

そう言って今度ははっきりと笑った彼に、今までとは違う優しくて柔らかい痛みに襲われた。

rewrite:2022.03.08