悪意の次に甘いもの
麗らかな昼下がりの中庭に、なんとも妙で怪しげな集団を見つけてジャックは食堂へ向かっていた足を止めた。
「……なんだあれ」
学園長が大切にしているらしい林檎の木の下に置かれたベンチに、手に何かを持った十人ほどの生徒たちが集まっている。腕章の紋様は様々だ。
「どうしたの?」
共に食堂へ向かっていたエペルも足を止め、ジャックの視線の先を辿る。
「あ、またやってる」
「また?」
「あれね、監督生クンたち待ってるんだよ」
「あの二人を?」
異世界からやってきたという二人の少年を思い出し、ジャックはますます怪訝そうな顔をした。
あんな大人数で一体何をする気なのか、と言いたげな顔をするジャックにエペルは笑いながら、
「あれ、“監督生様を崇め奉る会”だから大丈夫だよ」
聞き慣れぬ言葉にジャックはぎょっと目を見開いてエペルを見た。
「あ、あがめたてまつる?」
「そう、崇め奉る会。僕の同室の人も入ってるみたい」
「……何する会なんだそれは」
「えーとね、確か監督生クンたちが生活していきやすいようにお手伝いするって言ってた、かな」
エペルの同室者が言うには、“この世に降臨せし現人神たるかの方たちが心穏やかに日々を紡いでいけるよう少しでもお手伝いさせていただく”のがこの会の存在理由なのだそうだ。
あまりにも理解できない内容だったがためにジャックはもう何も聞かないことにした。
再び食堂へ向かいながら、時々あの二人が食堂ではなく購買で食事を買ってどこかへ行くのはそれのためか、とぼんやりと思う。
「二人も大変だな」
「あはは、そうだね。でもなんとなく、二人のことそう見ちゃうのも分かるかな」
あの二人はどこか超然とした、人ならざるもののような神秘的な空気を持っている。そのうえ、頭の回転も早く察しも良いからか、言葉でも物でも、こちらの求めているものをさっと出してくるのだ。
「まあ、俺も分からなくはねーかな」
けれど自分があの連中の中に入ることはないだろう、とジャックは思っている。
2022.08.22