どこにもない柩の匂い
※モブ視点
夏と言えば肝試しだと言い出したのは誰だったろう。盆休みに入りバスケ部の活動も休みとなった俺たちは家の近くの墓地にいた。
墓地内に点々と灯る外灯がより一層辺りを暗くさせ、不気味な空気をつくりだしている。先頭を歩く竹村の後ろをやいのやいのと騒ぎながらついて行き、通路の端まで行けば石段を上がりひとつ上の通路へ、また端へ行けば上へ、とどんどん上がっていった。
とりあえずの目標は墓地内一周だ。
「あ?」
ふいに先頭の竹村が止まった。
「どした?」
「いや、あれ……」
竹村が指差した先、ひとつ上の通路に誰かが立っていた。赤々とした髪が暗闇の中でもよく見え、その髪色にとある人物を思い出したけれどまさかと首を振る。
その人影はじっと目の前の墓石を見つめていた。こんな時間だ、墓参りに来たというわけではないだろうが俺たちのように肝試しという風でもない。
第一、ひとりだ。
「おーい、何してんだー?」
「ば、おい!」
俺の後ろを歩いていた木戸がその通路に立つ人物に声をかけた。何を考えているんだ、と睨みつけるけれど木戸はそのまま人影に近付いていく。
「お前、洛山の、」
慌てて後を追い、驚いた。竹村も木戸も驚いていて、でも俺たちの驚きはそこにいた人間があの赤司征十郎だったからということじゃない。
ただ黙って冷え冷えとした目で俺たちを見下ろす赤司の雰囲気が、何かおかしいのだ。まるでこれから死に行くような、重々しくねっとりとした酷く不快なものを感じる。
何してんだという竹村の言葉に、赤司は沼底のような目で、
「待ち合わせをしているだけだ」
と言った。
こんな場所で、一体誰と。
しかしそれ以上の追及を拒むように赤司は背を向けてしまった。
「……帰ろうぜ」
木戸が酷く気味悪そうな顔をしながら引き返していく。その後を追い石段を下りながら振り返ると、赤司がじっとこちらを見つめていた。ここからいなくなるのを待っているかのように。
それが酷く不気味で、俺たちは駆け足で墓地を後にした。
その翌朝、俺は竹村からの電話で起こされた。
昨晩、あの墓地で赤司が死んでいたらしい。首に手で絞められた跡を残して。
rewrite:2021.12.25 | ネタ提供:友人