箱庭の天使
水の中だと腐敗の進行速度が二分の一になるのだそうだ。特注して家まで運んでもらった水槽に水を溜めながら、いつか読んだ本の内容をぼんやりと思い返す。
少なめの位置で水を止め、慎重に大和を沈めた。浮いてしまわないように椅子にくくりつけたままにしてしまったが、案外良いかもしれない。
これだけだと寂しいだろうから、テーブルに本と、彼の好きだった硝子の置物を入れていく。どんどん入れていけば水嵩が増し、丁度良い水位まで上がっていった。
窓から入る夕日で彼がきらきらと輝いてみえる。水の中の方がずっとずっと綺麗な彼を、水槽の前に持ってきた椅子に腰かけ眺めた。きっと一日見つめていたって飽きないのだろう。
翌朝は生憎と雨が降り出したが、薄暗い室内とは反対に水槽の中は不思議な明るさがあり大和は相変わらずきらきらと煌めいていた。
もしかしたら彼自体が発光でもしているのかも知れない。そう思ってしまった自分がおかしくて少しだけ笑った。
翌朝はよく晴れ、白い彼の肌が日に透け美しく光っていた。一体いつまで彼はこの姿を保つのだろうか。
きっと一、二週間もしたら徐々に崩れ落ちていってしまうのだろうけれど、きっとそれも美しいに違いない。
ああそうだ、日記をつけてみよう。カメラで撮影するのもいい、彼の記録を作るのだ。さながら彼の観察日記というところだろうか?観察日記だなんて小学校以来だと少しだけ笑ってしまう。
使っていなかったノートを引っ張り出して、今日の日付を記す。それから思うがまま彼のことについてペンを走らせた。
そうして一週間が経った。
やはり大和は徐々にだけれど崩れてきていた。毎日一枚ずつ撮り溜めた写真の画像とノートの記録を見返し、思う。
彼は崩れ始めてからより美しくなり、不思議な光が増した。きっと膨張しても彼は綺麗なままなのだろう。
こうしてカメラで彼を撮っていると自分が芸術家かなにかになったような気分になる。そう感じるくらい彼は美しく輝いていた。
カメラの中の画像をしばらく眺めてから、今日の日付をノートへ記した。
rewrite:2021.12.25 | 死体と暮らす赤司征十郎は性癖のサビ感ある