まほろ新星
冷え込む季節になってきて、赤司の手もいつもよりもっと冷たくなってきた。動いてても冷たいままっていうこともあるくらいだ。
だからカイロを持ちなさいと言っても全然持たないし、その癖冷えたら冷えたで俺の首やら脇腹やらで暖めようとするからもうこっちとしては堪ったもんじゃない。心臓に悪いことこの上ないのだ。
「ぎゃああ!」
ぴたり、と氷のような冷たさに首筋が覆われる。今絶対心臓止まった、俺一回死んだぞ。
「やめろよ赤司!びびんだろ!」
喚きながら離れて振り返れば案の定いい笑顔を浮かべた赤司が立っていた。
「冷えたから暖めようと思って」
ちょうど聖司もいたし、と悪びれもせずにさらりと言った赤司にムカつくけど何も言わない。怖いし。
「だからカイロ持てって言ってんじゃん……」
ポケットに常備していたカイロを引っ張り出す。
別に赤司の為に常備しているわけじゃないんだからネ、俺の心臓と首のためなんだからネ。
「ほら」
カイロを差し出すが赤司は受け取ろうとしない。
またこいつは何でいつも素直に受け取らないかな、と溜め息を飲み込んで記録用紙の挟まったバインダーをベンチに置き、赤司の手を掴む。分かっていてもその外にでも居たのかってくらいひやりとした温度に一瞬息が詰まった。
ときどき死んでるんじゃないかと心配になる。カイロを赤司の手の間に挟み、外側から自分の手でぎゅっと挟む。何が悲しくて男の手などサンドしなければならないのか、桃井ちゃんとかならもう大歓迎なのに。
「聖司の手は暖かいな」
「まあな。青峰のがあったけえと思うけど」
少しずつ赤司の手が暖まって冷たさを感じなくなってくる。赤司が「血が通ってきた」と言うのは大体このタイミングだ。もうわかってしまっている自分に悲しくなる。
いつになったらこいつはカイロを携帯するのだろうか。
「いい加減自分でカイロとか持って来いよ」
「いやだ」
「じゃあ俺で暖とるのやめろ」
「いやだ」
「もう何だよお前ええ」
笑うだけで何もしない赤司に、飲み込みきれなかった溜め息がとうとうもれた。
rewrite:2021.12.13