見つからない秘密をあげる
▼ イデア・シュラウド
鮮やかなマリンブルーの瞳がふと暗く翳り色を失くす瞬間を目にしてから、ずっとその時のことが頭から離れない。どこか遠くを見つめる焦点のずれた虚ろな目と血の気の失せた頬が、延々と脳裏に映されて、目を閉じればすぐに浮かんできてしまう。
どうして気になるのかが気になって姿を見かける度に目で追っていれば、そこからはもうずぶずぶと落ちていった。
どう見たって自分とは真逆の場所に立つ圧倒的陽キャで、マジカメ狂いのケイト・ダイヤモンドや光属性代表のカリム・アルアジームなんかとも仲が良くて、絶対に接点も無ければ関わりたくも無いような人種なのに、気になって気になって仕方がない。
今どうしてるかななんて気持ちの悪いことを考えてしまったり、タブレットのカメラ越しにその姿を捉えれば録画を開始してしまったり。どうしても出席しなければならない授業で目が合えばもうそれだけで苦しくて、少し笑んでくれただけでもう意味が分からないほど胸が痛くて泣きそうになって。
なんだってこんなに乱されてしまうんだ、なんて思って、そうして出てしまった答えに絶望した。
ああ、これはきっと叶わない。あまりに絶望的で死にたくなっても残酷にも時は過ぎるし朝は来る。
そうしてまた出たくもない授業に出席した帰り、人気のない廊下を視線を床へ這わせて歩いていたとき、小さく洟を啜る音が聞こえた。ほぼ悪童しかいないような無法地帯において誰が来るかもわからない場所で泣くのは命取りだ。
一体何処の馬鹿だ、なんて野次馬感覚で音の元へと近寄ってみれば、
「アェッ」
翳るマリンブルーに喉が詰まって奇妙な音が漏れた。
ずっと目で追ってきた彼が、柱の陰に隠れるように凭れ座り込み虚ろな瞳から涙を落としている。焦点のずれた瞳からはらはら散っていく煌きの残滓が眩くて、目が離せなくて、引き寄せられるようにふらふらと近寄ってしまう。
平時ならば絶対に近寄らなかっただろうが、今この瞬間を逃してはいけない気がしたのだ。チャンスだと思った。
この、美しくも伽藍洞なマリンブルーに触れるたった一度の。
rewrite:2022.02.16