清く正しくきらめいて


▼ 市原豊

全国高校野球埼玉大会、三回戦目。崎玉なんとか勝ち進んで、次は西浦高校との対戦らしい。
豊からのメールにいつもの如く返信はせず目を通しただけで閉じ、枕に顔を埋め息を吐く。ゆったりと訪れる眠りに目を閉じようとしたそのとき、ふと思った。
応援、行ってみようかな。
今まで一度も豊の応援に行ったことはない。豊は直接来てほしいと言ってきたことは一度も無いけれど、いつもいつも試合の度に何処で何処の高校とやるのかを知らせてくるから多分来てほしいのだろう。
来てくれって言えばいいのに、言わないところが豊らしいとも言える。まあ言われても行くかどうかは分からないけど。

「……行くか」

そうだ、そうしよう。吃驚して、それから顔を真っ赤にするだろう。あいつ俺のことめちゃめちゃに好きだからな。
その様を想像するだけで楽しくなってきて、鼻歌交じりに着替えを済ませ最低限の物だけ持って自宅出る。
会ったらなんて言ってやろう。

「あっちいなあ」

真っ青な空を見上げ、帽子を被ってこなかったことを後悔した。崎玉側のスタンドには野球部部員たちの保護者がちらほら座っている。
厄介なのもいるから絡まれても面倒だと一番後ろの列に座り込み、買ってきたお茶を一口二口。試合はもう四回表まで進んでいて、状況は四対零でうちが負けている。
まあそんなもんだよな、うちの野球部はたいして強くないみたいだし。三回戦まで行けたんだから十分良いほうだろう、なんて、まだ終わってもいないのに俺は崎玉の負けを確信していた。
そして予想通りの結末となる。コールドでうちの負けだ。

「よーっす」

反省会を終え、それぞれ着替えている崎玉高校野球部の面々に声をかける。保護者の方々にも頭を下げてとりあえず挨拶して、豊の前に立つ。

大和……」

なんでここに、みたいな阿呆っぽい顔で俺を見つめる豊に思わず笑ってしまう。

「応援しに来てやったんだよ」

嬉しいけど来てほしくなかった、みたいな複雑な顔をする豊に、俺はとびっきりの笑顔で言ってやるのだ。

「格好良かったぜ、豊」

rewrite:2022.02.16