「ゾンビの夢見たからお肉食べれない」
「前もゾンビの夢じゃなかったか」
「あれはなんかヤバいウイルスのやつ」
「ああ、バイオみたいな」
「うん」
「またホットケーキ食べるのか?」
「今日はおうどん食べます」
「何うどん?」
「カレーうどん」
「昨日もカレーじゃなかったか?」
「昨日はカツカレーだから違う」
「違うのか」
「違うだろ。征十郎は?」
「……カレー食べたくなってきた」
「カツカレー?」
「チキンカレー」
「週末またカレー食べに行く?」
「ナンのとこ?」
「うん」
「行く。……うわ、重そうだな」
「思ってた以上になみなみ」
「零さないようにな」
「ん」
「……うどん何玉?」
「五?おばちゃん五人前くらいって言ってた」
「訳の分からないメニューだな本当に……」
「あ、煮卵も五個入ってる!見て征十郎」
「良かったな」
「一個あげる。夢の話してもいい?」
「ありがとう。気持ち悪いやつか?」
「気持ち悪くはない」
「……」
「征十郎は花に喰われちゃうかな」
「ええ……?」
「うーん、花っていうか触手っていうか、まあ花かなぁ、あれは」
「気になり過ぎて食事に集中できない」
「じゃあ話すわ」
「どうぞ」
「ゾンビ湧きまくりで学校に避難しに行くんだけど、出てくるゾンビはあのよくある目があんまり見えなくて音に反応するタイプで」
「うん」
「学校自体は家のすぐそばなんだけど、学校内もゾンビがうろうろしてんの」
「ありがちだな」
「うん。で、万が一を考えて二階以上かつゾンビがいない部屋があればそこ拠点にしようってことになって探すんだけど、まあ同じ考えの奴はごろごろいるじゃん」
「漫画でもよく学校に避難してくるからな」
「それかデッケー商業施設な。二階はどこもどっかの家族がもう閉じ籠ってて、三階まで来たときに階段に一番近い教室の前にどこに出しても恥ずかしくないパリピ系の野郎が数人いて」
「うん……?」
「なんかドアの窓んとこから中覗いてひそひそしてて、何してんのかなーてちらって見てみたら中がゾンビでぎゅうぎゅうなんだよ」
「うわ想像したくない」
「もう犇めき合うどころじゃなくて」
「嫌な予感しかしないんだが」
「俺も何かマズい感じしたから父さんと母さんに急いで上の階に行こうってジェスチャーして、なるべく静かに階段上がってたら、あの部屋の前にいたクソ野郎の一人が馬鹿デカい声で笑ったわけ」
「あ~……」
「ドアぶっ壊れる音聞こえたからダッシュで階段上がって、どっか飛び込もうとしたらちょっと行ったとこの教室のドアが開いて征十郎が俺の名前を呼ぶわけですよ」
「うん」
「めちゃめちゃ安心した」
「それは良かった」
「父さんと母さんもなんとか無事教室まで来たからドア閉めて鍵かけたんだけど、もう外が怒号と悲鳴が飛び交うパニック映画で」
「そりゃあそうだろうな」
「開ける訳にもいかないから悲鳴をBGMに俺は征十郎と現状把握に勤しんで、その後は特に何事もなく数日が過ぎる」
「急に時間軸が飛んだな」
「夢だからね。外のゾンビが少なくなってきたし昼間に少しだけ裏庭に出てみようって征十郎に誘われて」
「うん」
「天気も良くて、学校の周りは何でかゾンビがひとりもいなくて静かで」
「それすぐそばにボスポジションの奴がいるときのアレだろう」
「征十郎もホラーの定番が分かってきたね」
「大和のせいでな」
「あはは」
「はあ……続きどうぞ」
「んふふ、えーと、裏庭の奥に丸く開けた場所があって、その中心に花壇みたいに花が密集してて。なんだろうなって近付いたら触手とはまたちょっと違う感じの薄黄色でラメラメした半透明の何かが花の中央から出てきて」
「ラメラメなのか」
「ん~ラメラメっていうかなんか、あの……鏡粉々にして入れたみたいな感じ?」
「ちょっとオモチャっぽいな」
「ファンシーな感じはした。そのファンシー触手見た征十郎が俺の背中押して、走って教室に帰れって怒鳴んの」
「死ぬやつ」
「あっはは、でも俺征十郎のこと置いて逃げたくなくて、征十郎の腕引っ張ろうとしたらそれより先に薄黄色のラメラメが征十郎の腕に触っちゃって」
「ああ~」
「そしたら征十郎がパッて消えちゃって」
「そういう感じか」
「征十郎が花に喰われたって分かった瞬間目が覚めた」
「まあ生々しく捕食されたわけじゃなくてよかった」
「俺の気持ち的には何も良くないけどね」
「だから朝妙に情緒不安定だったのか?」
「うん」
「夢だから」
「うん」
「大丈夫」
「うん」
赤司征十郎が花に喰われた?夢
2025.04.21