「俺女の子にされてた!」
「そんなような夢前も見なかったか」
「あれは女の子にもなれるやつ」
「ああ、性別選べる世界だったか」
「うん。あ、今日の日替わりサバ味噌だ」
「じゃあ和風にするのか?」
「今日はあんかけ焼きそば食べたいから中華」
「ぱりぱりじゃないけどいいのか」
「俺はその辺こだわりないからいいです。征十郎は?」
「ナポリタン」
「この前も食べてた」
「定期的に食べたくなる」
「なんか週一くらいで食べてない?」
「そんなに頻繁には食べてない」
「週一で食べてんのは親子丼か」
「それもそんな頻繁には食べてない」
「連日親子丼食べてた時あったじゃん」
「そういう日もある。大和だってほぼ毎日ステーキ丼食べてただろ」
「うちの家訓で肉は毎日食べないといけないってあるから」
「はは、お前の家なら確かにありそうだな」
「あと週に一度は必ず家族全員でお茶しなければならないっていう家訓もあると思う」
「ああ、言ってたな。高校からは月一なんだったか?」
「毎週帰ると交通費ヤバいから。今月は再来週」
「気を付けてね」
「ありがと。一口食べてみる?」
「間に合ってます」
「ぱりぱりしてなくても美味いのにな~……あ、じゃあ夢の話していい?」
「ああ、女の子にされてたやつ?」
「そう。俺さぁ、現実でも昔はめちゃめちゃ可愛かったじゃん?」
「そうだな。あの写真って小学校くらいだったか?」
「リビングにあるやつは確かそう。六年生までのやつ」
「……成長したな」
「一時期母さんにタケノコちゃんって呼ばれてた」
「あはは」
「で、夢の中の俺は多分あんま成長しなかった俺っぽい。中学二年とか三年とかそれくらいじゃないかと思うだけど声変わりもしてんくて、背も低いまんま」
「ほう」
「で、権力バリバリ金持ちっていうすぐに殺されて死にそうな男が父親なんだけど、そいつの言いつけで俺は女の子の格好してんのよ」
「変態な親の話?」
「や、俺が学校でいじめられた結果ビフォーアフターする話」
「はい。じゃあ続きどうぞ」
「はい。夢ん中の俺の家も征十郎ん家みたいに使用人がいるっぽくて、その一人に毎朝きっちり化粧されててさぁ……もうどこからどう見ても美少女なんだよ」
「そうか」
「で、中身は俺だから何やっても完璧に出来ちゃうわけじゃん?」
「うん……うん?」
「だから一部の女子にやっかまれててずーっといじめみたいなん受けてて」
大和が?」
「うん」
「黙ってずっと?」
「夢だから」
「ああ……」
「悪口だのなんだのは別に気にしてなかったんだけど物壊されたり無くなったりすんのは普通に迷惑で、女の子やめて~~~~ってめちゃめちゃ思ってる」
「やめられないのか」
「やめたらどうなるか分かんないんだよ」
「えっ」
「まだ手は出されてないっぽかったけど父親に凄い粘着質な目でじろじろ見られたり時々ねろっとすれ違いざまに触られたりしてて」
「あ~~~~……」
「大丈夫、何も起きないから」
「はい」
「父親に抵抗できるほどの力は華奢で美少女な俺には無いわけよ」
「うん」
「だから下手に抵抗すると何されるか分かんない」
大和ならそれぐらいどうとでもするのでは?」
「夢だから」
「ああ……」
「そんな俺にも仲良くしてる女の子の友達のようなものが二人いて、よく学校の裏庭?みたいなとこ?なんか奥まってて寂れまくってるとこにある物置小屋的場所で時々お話ししたりしてる」
「空き教室とかじゃないのか」
「空き教室は襲撃を受ける」
「襲撃」
「うん。だからなるべくバレにくい場所に集まってたっぽい。ピクニックシートとかクッションとかランプとか色々持ち込んで秘密基地みたいにしてた」
「結構楽しんでるな」
「うーん、それなりに楽しんではいたんだけど、二人とは純粋な友達ってわけでもなかったような気がするから」
「ふうん?」
「俺、美少女だけどしっかり男なわけじゃん」
「うん」
「それ知ってんのは二人だけなんだよ」
「ああ、言いたいことはなんとなく分かった」
「なんか無駄に生々しいっていうか、そんなとこリアルにしなくていいだろってとこが妙にリアルだったんだよな。母親は母親で美人な俺に嫉妬してたりして」
「うわ」
「どこにいっても疲れるからもういい加減やってらんねーなーって思い始めてた時に、俺の秘密基地が荒らされちゃって」
「まあいずれはバレるだろうな、学内なら」
「そうなんだよな。俺のこといじめてた主犯格みたいな女がどうしようもねー男ども連れてめちゃくちゃしてるとこに俺がばったり出くわしちゃって」
「うん」
「いよいよブチ切れた俺が小屋ん中にあった錆び錆びのシャベルを手に取りまして」
「あ、わかった」
「はい」
「これでお前の墓掘ってやるよって言ったんだろう」
「え、なんで分かんの」
大和だから」
「スペシャリストじゃん」
「まあな」
「んふふ。でね、シャベルで死なない程度にぼこぼこにした後、やっぱりもう女の子やめよって思って美術室みたいなとこで化粧落として、女の子に髪の毛も切ってもらった」
「ああ、それでビフォーアフター」
「うん。もうどっかたどう見ても紛うことなき男」
「化粧はすごいからな」
「ほんとそれ。で、男に戻ってからは家にも帰らず友達とか知り合いとか色んなところ泊まり歩いてて」
「急に素行不良だなぁ……」
「まあ戻ったらどうなるか分かんねーからな。で、征十郎がここで出て来るんだけど」
「ああやっぱり出るのか……」
「裏稼業みたいなヤベー人ん家に泊まった時にたまたま征十郎が遊びにきて」
「え、待ってくれ。俺はそんな人と交友関係を結んでいるのか」
「うん。そんで俺の状況を知った征十郎が爆弾を用意してくれて」
「え?」
「父親の車にエンジン掛けたら爆発するように仕掛けてくれて、一緒にカフェから爆発すんの見てたよって夢」
「急角度すぎる」
「征十郎はいつだって俺のことを助けてくれる」
「そういう助け方はしたくない」
「まあリアル征十郎は法的にせめて社会的に殺しそうだけどな。イマジナリー征十郎は全てを暴力で解決するタイプっぽかった」
「裏稼業と友人ならそうなるんだろうな……」
「まあ夢だから」
「そうだな」

女装させられてた夢

2023.04.20