「今日は何にすんの」
「チャーシュー丼かスタミナ丼か焼肉定食」
「珍しいな、めちゃめちゃ肉じゃん。どしたの?」
「むしゃくしゃする」
「おお」
「どいつもこいつも俺に仕事を押し付けて……」
「よし、じゃあそれ三つと焼きプリン食お。半分ずつなら征十郎でも食べれんでしょ」
「うん」
「放課後も生徒会?」
「そう」
「俺も行く?」
「何しに?」
「征十郎の横に座って皆のこと見てる」
「ああ、それは確実に仕事が減る。来てくれ」
「んふふ、じゃあおやつ持ってくな」
「和菓子が良い」
「大福と最中と、あと確かべこ餅もあるけど。全部持ってく?」
「うん。お前の鞄はなんでも出てくるな」
「マドレーヌとかチョコとかパイとかも入ってるぞ。それもいる?」
「どっちでもいい」
「じゃあ俺が食べるから持ってく。……元気出そ?」
「うん。ありがとう」
「どういたしましてー。はい、どれから食べんの?」
「スタミナ」
「ん。じゃあ俺はチャーシャーにしよ」
「……」
「……」
「なんか話してくれ」
「なんかぁ?……あ、そういえば俺今日中華っぽい王宮で働いてた」
「部隊か何かか?」
「や、靴屋さんみたいなの」
「ふうん?」
「なんかの役職についてる人が三、四歳くらいの女の子連れてきて、その子の靴作ってくれっていうからサイズ測ったり好きな色聞いたりしてたら警報みたいな音が流れて」
「おお」
「敵襲、供と逃げろって放送が流れて」
「とも?」
「護衛みたいな感じの人らしい。武器持ってて戦える人で、王宮勤めだったら一人に一人ついてて、辞めるまでずっと変わんないんだって」
「軍とかとは違うのか」
「うん。護衛専門の人」
「へえ……」
「それで、女の子の親待ってたんだけど全然来ないから抱えて逃げて、そしたら俺の護衛は職務放棄してどっか行っちゃって」
大和は戦えるのか?」
「靴屋さんだから戦えないと思う。子供抱えてるし。とりあえず逃げて、自分の家に帰ったんだけど父さんが敵国の人と争ってて」
「想像できない」
「なんか……サスマタだっけ?あの先端がUみたいな形のやつ」
「さす又だな」
「サスマタでぐいぐいしてた」
「いや勝てないだろ……相手丸腰か?」
「軍人っぽかったから武器持ってると思うけど、サスマタでぐいぐいされてた」
「遊んでるのか」
「どっちも必死な顔してたな」
「敵襲ってそんな感じなのか……」
「や、多分違うと思う。家に入んの止めて女の子連れてまた逃げてたんだけど普通に死体転がってたし」
「ええ……」
「逃げてる最中に適側の大将っぽい人が歩いてるの見えて近くの物置に隠れたけど、その隣の家に敵が攻め入ってて殺されてたし」
大和の家だけ謎に平和だな。それで?」
「気付いたら知らない家で寝てて、保護したって言われた」
「助かったのか」
「それがさ、分かんないんだよ。自分たちのいたとこなのか敵側のとこなのかも全然分かんないし下手なこと聞いて殺されても嫌だし」
「女の子は?」
「いるいる。一緒に保護されてた。で、その家の一人息子で征十郎くんがいるんですけど」
「あ、俺も出たのか」
「そりゃあ出るよ」
「出ないかと思った」
「俺の夢だぞ?」
「はい」
「しばらくそこでお世話になって、女の子も大きくなってきて」
「そんなに世話になってたのか?何か月とかじゃなく年単位?」
「うん。十年くらいは経ってた」
「世話になりすぎでは」
「征十郎が居てくれって言うから。でも女の子の家族が見つかったって連絡が来て、大病院っぽいとこ行ったら女の子の親と、父さんらしき人が居た」
「らしき人?」
「見た目は父さんっぽいんだけど、なんか違うんだよ」
「成りすまし?」
「にしてはめちゃめちゃ精巧なんだけど、なんか違う。アウトドア好きそうな感じっていうか」
「別人じゃないか」
「あは、そう見た目以外別人なんだよ空気感が。まあ十年経てば変わるのかもしんないけどさぁ」
「いやあの人の引きこもり気質は何十年たっても変わらないと思うぞ」
「俺もそう思う。だから女の子だけ引き渡して、俺は征十郎と一緒に家に帰ったっていう夢」
「俺も行ってたのか」
「最後になるかもしれないからって送ってくれた。一緒に帰るって言ったときはちょっと泣きそうで可愛かった」
「まあもう会えないと思ってたんなら嬉し泣きくらいするかもな」
「リアル征十郎も?」
「リアル征十郎も」
「か、かわい~~!」
「可愛いは嬉しくないんだが」

王宮で靴屋さんをしていた夢

2023.03.31