「今日は和風定食」
「俺も和風定食~」
「肉じゃなくていいのか」
「サバの塩焼き美味そうすぎて肉どころじゃない」
「ふふ、肉どころじゃないのか」
「うん。あ、わらび餅ついてる!」
「良かったな、黒蜜きな粉だぞ」
「テンションあがるわ。征十郎はきな粉だけの方が好きなんだっけ」
「ああ。俺の分も掛けるか?」
「かけたーい!」
「……くどそう」
「それがいいんだよ。お漬物と交互に食べんの」
「無限ループするやつだ」
「そう。無くなるまで永遠に終われないやつ」
「そう聞くとなんか恐ろしいな」
「……」
「……」
「サバ美味すぎん?」
「うん」
「……」
「……」
「味噌煮が一番美味いと思ってたけど塩焼きも同じくらい美味い。泣きそう」
「……これよりも美味しいサバの塩焼きを出す店を知ってるっていったらどうする」
「絶対連れてって!て駄々こねる」
「っふふ、分かった。今週末連れてくよ」
「やった、めちゃめちゃ楽しみ。泊まる?」
「泊まる。見たがってた画集も持っていく」
「あのばかでかいやつ?」
「そう。実家から持ってきたから」
「うわ~寝れね~!土曜まであと三日もあるとかあり得ないんだけど」
「楽しみにしててくれ」
「もう今からうっきうきだわ」
「……あ」
「なに?」
大和に謝っておくことがあるんだが」
「え、なに」
「昨日黄瀬とちょっと話してたんだけど、そのせいで次に大和と会った時に変な絡み方をするかもしれない」
「ふーん、出会い頭にぼこぼこにしろってことだな」
「こら」
「征十郎に『こら』って言われんの結構好き。俺に変な絡み方するような話したの?」
「いや、ほとんど部活の話だったんだ。けど、大和といつから付き合ってるのか聞かれて」
「聞かれて?」
「答えたら、じゃあ他の人のこと名前呼びしないでって言ったのも大和かって聞かれて」
「はい」
「そうだって答えたんだ」
「まあそうだからね」
「『へ~工藤っちってヤキモチ焼きの束縛強い人だったんだ、意外っスね』って」
「うーーーーーーわクソ面倒くさそうなやつ。でももう会うことないだろ」
「試合観に来るんだったら会う可能性がある」
「あ~……まあそん時はどうにかする」
「ほどほどにな」
「うん。俺も思い出した話していい?」
「なんだ?」
「征十郎のお父さんの実家ってさ、森の中にあったりする?」
「分かった、怖い夢の話だな」
「うん、まあ。征十郎のお祖父ちゃんの家が森の中にあって気持ち悪いっていう夢の話」
「……親戚の家が森の中にある」
「え、怖い……どんな家?」
「あまり詳しくは知らないが近くに祠があって、それを守る役割の家だと聞いた」
「え!?」
「えっ」
「透視に近いものを見てしまったのかもしれません」
「……どうぞ」
「森の入り口はちゃんと舗装されてんだけど、少しずつ獣道みたいになってくんだよ。で、家が見えてくるとひらけた場所に出て、栗がたくさん落ちてる」
「うん」
「どっかから落ちて転がってきたっていうよりもわざわざ撒いてるって感じで、踏まないようにこう、靴で除けてくみたいにしないといけなくて。で、家の前にお地蔵さんが並んでる」
「ああ……」
「家の裏庭に石段があって、それが森の奥に続いてる。その先に祠みたいなのがあった」
「……」
「……」
「確認してみるか?」
「する……?」
「……やめておこう。ただの怖い夢だ。俺の祖父の家は普通に住宅街にあるから夢とは違う」
「……うん」
「土曜はサバだからな」
「元気でてきた」

夢と片付けるには不思議な夢

2023.02.27